アメ車界で「ボンネビル」というと、最高速チャレンジを意味する。

イベントレポート

BONN EVILLE Salt Flats Speed Week

アメマガ2021年11月号

2021.08.07-13
BONN EVILLE Salt Flats Speed Week


フルスロットルに賭ける青春

BONN EVILLE Salt Flats Speed Week Aug7-13,2021

ボンネビルという言葉を聞いたことがあるだろうか?アメ車界で「ボンネビル」というと、ボンネビル・ソルトフラッツ・インターナショナル・スピードウェイ(広大な塩湖)にて開催される最高速チャレンジを意味する。すなわちスピードに魅了されたホットロッダーにとっての聖地であり、アメリカ人にとって特別な場所。ユタ州の広大な塩湖でのランドスピードレースの中でもハードコアなホットロッダーが世界中から集結する「ボンネビルスピードウィーク」。メダルも賞金もないが世界最速を証明するうえで最も権威あるHot Rod界のオリンピック的大会。

 

今回はアメ車ショップ:フォーティエイトの渡邊氏が再び挑戦したスピードウィークの模様を中心に、ボンネビルの魅力、そして今のアメリカをレポートしよう。

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アメリカの自動車趣味の頂点はなんといっても「Hot Rod」だ。愛車をより速く走らせたいという純粋な思いがすべてのルーツとなる。中古車をベースにジャンクヤードで入手したパーツなどを駆使して独自のモディファイでポレンシャルを高める。

 

その成果を証明する手段としてストリートレースが急増し、事故の多発で社会問題にまで発展。そこでドラッグレースを正式な競技として確立すべく非営利団体としてNHRA(National Hot Rod Association)が発足したことで、アメリカを代表するメジャーモータースポーツにまで発展。

 

そして、最高速度においては1910年代からユタ州の広大な塩湖をトラックとして利用され、30年代にはホットロッダーたちに浸透。37年に地元のカークラブが集結し、アメリカで最古の非営利レース運営団体に発展したSCTA(Southern California Timing Association)によって開催されるボンネビルスピードウィークは、ランドスピードレースにおいて最も歴史のある大会として世界中からスピード狂が参加する。

 

ドラッグレース同様に、クルマ、バイクだけでなく、スノーモービルも含めてどんな車種でも参加が可能。年式や生産国も様々。50ccのスクーターをベースにしたものから、時速800kmの領域のトップカテゴリーのストリームライナーまで、速度域も幅広い。2台で勝敗を競うドラッグレースは、ステージングでの駆け引きなどドラマチックでエンターティメント性に富んでいるが、ランドスピードレースは1 台ずつの計測で勝敗は関係ない。

 

最高速度に特化した仕様なだけに、スタートもスローだし、最高速到達時にははるか数マイル先なので、目視するのも難しい。そんな性質のレースなだけに観客は少なく、NHRAのようにESPNで放映されることもない。レコードを樹立しても、賞金やメダルなどもない。

 

それでも、200mph(時速321km)以上でクラスレコードを更新した証である“200 マイルクラブ” の称号は、ホットロッダーとしては一番のステイタスとなっているため、ボンネビルスピードウィークにはそれを求めて毎年参加する真のホットロッダー達が集結する。

 

安全管理を徹底しているため、厳しいレギュレーションをパスしないことには出走はできない。またボンネビルは1300 メートルという高い標高ゆえに空燃比設定が定まらなかったり、路面状態もその年によって変化。気温も40℃を超えるなど、自然を舞台にしているゆえの難しさがある。

 

ロサンゼルスから1000kmというロケーション的にも気軽に行けるところではない。開催中の一週間は夏休みシーズンで旅費もピーク時だったりと、何かとハードルが高いのである。それだけに、ここに複数回足を運んでいる者は、間違いなくハードコアなホットロッダーなのだ!

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ホットロッドやマッスルカーに関係する業界全体を牽引するVIP、ジョージ・ポティート様率いるスピードデーモン・チーム。ストリームライナー2機と“ブローフィッシュ”バラクーダでエントリー。ちなみに最高速度は480mph(時速770km)

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NASCARホモロゲーションカーとして500台しか出荷されなかった希少なウイングカー、デイトナが会場内に3台も。69年当時に初めて200mphを超えたポテンシャルの高さはお墨付き。

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爆撃機などの燃料タンクをアレンジしたベイータンク車は、往年のランドスピードレーサーのアイコン的存在。空力をはじめ、ホットロッドでは航空機から技術をフィードバックすることが多い。

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アイアコッカ時代のクライスラー車によるシェルビー・パッケージが2台揃ってエントリー。直列4気筒のFF駆動というアメ車らしからぬメカニズムで当時は不人気だったが、時間の経過で近年ではコレクタブルな存在!

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カスタムVANブームに連動して、エコノラインとピントワゴンとで77年にリリースされた“クルージン”パッケージのオリジナルのカラースキムが魅力的。ムーンディスクを装着した佇まいがクール!

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新旧NASCAR3台が速度計測のためにエントリー。タイヤもNASCAR用のままで出走。ゼッケン71のデイトナのクルー達は当時の雰囲気のお揃いのシャツできまっていた。

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とにかくランドスピードレサーの足元はムーンディスクがお約束。空力の追求によって生まれたスピードパーツであると同時に、ルックスの良さにも貢献する魅力的なアイテムだけに、サービスカーにお揃いで装着するケースも!

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コースに沿ったエリアでのんびりと観戦する人達。東京の都心がすっぽりと収まる規模なので余裕のディスタンス。スタートエリアではレースカーを間近で観たり、クルー達と会話を楽しむことも可能。レースの状況はFMラジオでタイムリーに聞けるのだ。

日本のサムライが240Zで再びボンネビルに挑んだ

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車種に関係なく最高速度を意識する者の延長線上にはボンネビルスピードウィークがある。他のメジャーモータースポーツのような興行としての魅力は低いものの、広大な塩湖を舞台に車を少しでも速くするための工夫やテクニックを実践、証明する場という点では最高の一週間なのだ。DIYが基本のアメリカのホットロッダーには聖地となっているのである。

 

そんなわけで、日本からもこれまでにチューニング系のショップやメーカーが参加しているが、大概はその一度きりで、アメリカのホットロッダーからはあまり良く思われていなかったりする…。

 

その点、本誌でもフィーチャーした2017年に初参加したフォーティーエイトの渡邉氏は、毎年参加することを目標にしており、2021年で4回目の参戦となる。前回は70年型のHEMIチャレンジャーで初参戦した友人のサポートにまわったが、今回は自身の240Zで再び出走。そして、仲間内でもうひとりバイクで参戦することになったため、自分も応援すべく2度めの参加となったのだった。

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スピードウィーク参戦をはじめ、アメリカでの拠点の確保など、あらゆる面でお世話になっているチャボエンジニアリングの木村さんと、今回バイクで参戦したトミーさんは、木村さんが日本で活躍していた当初からの古い付き合い。そんな関係があってバイクの製作は木村さんが担当、今後可能な限り参戦し続けることを目標にスタート。

 

ちなみにトミーさんはこれまでにMOPARマッスルやドラッグマシンを乗り継いでおり、現在もチャレンジャーのプロストリートをプロジェクトすべく、ローリング状態を所有する強者。

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そんな趣味の近い古い友人の参戦とあって、レポーター石橋としても強行で同行したのでした! 当初はトミーさんの応援のつもりでいたものの、クルーとして毎回参加している“ 部長” が欠席となっため、自分がその代役を務めるカタチに。

 

レース出発前の準備も含め2週間のスケジュールで渡米。初参加のときと違って、車自体は完成しているものの、ボンネビルならではの塩によるサビが思いのほか広範囲に広がっていたため対処したり。

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今回は無理がたたって渡邉君が体調を崩していたこともあり、1日遅れで出発。トミーさん&木村さん一行は予定通りに出発。現地に着いたら何はともあれ車検。前年OK だったとしても、改善を要求されることもある。

 

今回は手が車外に出ないようにハーネスの長さを短くするように指摘があり、そのために届かなくなったオーバーヘッドに設置していたスイッチボックスを手元に移設したり、キルスイッチの配線の変更などを行なって、なんとかクリア。 一方トミーさんのトライアンフは、車検一発クリアなうえ、初走行の時点で時速180kmをマークして、いきなりクラスレコードにリーチという優秀さ。

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240Zも結果的には171mph(時速275km)で自己ベストを更新することができた。エンジンは修理が必要なほどのダメージを受けたりと大変な面もあったが、年齢、性別、国籍を超えて暖かく接してくれる会場内の空気感がすべてを帳消しにしてくれるほど心地良かったのだ。

 

そんな参加した者同士が共有する一体感に、ホットロッダーとしての誇りを感じることができる。

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空港からガレージに直行。レポーター石橋はサビ落とし&ペイントなど諸々の作業を担当することに。

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予定通り出発するトミーさん木村さん達一行を見送って…、なんとか翌日には出発。

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LAからボンネビルまでの約1000kmの道中では、トレーラーからラダーが落下したり!

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とにかく会場は広いのでパドックもこんな感じ。東京の都心が収まる規模なだけに、パドックからコースまでは15kmほど離れている。ちなみに、レース期間中は車中泊なので、トラベルセンターのシャワーを利用。

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出走は1台ずつなので、前の車がトラブルとコースがクリアになるまで長時間待機することも。そんな中、後ろに並ぶテキサスから参加のドライバーが扇風機を貸してくれたり。全く知らない外国人に優しく対応してくれるボンネビルのように心も広いホットロッダー達が多くて素敵!

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トミーさんは、木村さん制作の1956年型トライアンフで650ccのクラスにエントリー。初走行で180kmを超えたりと、クラスレコードの122mph(198km)も射程距離内だった!

アメリカのモーターカルチャーはどこまでも熱かった

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1日ずれ込んだといえ、日曜日から金曜日まで6日間びっちりレースを満喫。現地でランチをとって、1000kmの帰路の景色を楽しみながら無事に拠点のアズサに帰還。翌日の土曜日はレースの片付け。そして塩湖で付着した塩を落とすべく、トレーラーにレースカーを積んだ状態のままトラックでコイン洗車場へ。塩はかなりのボリュームでガッツリと固着して、場合によっては不具合を起こす原因にもなったりする。それだけに、レンタカー会社によっては塩湖に入らないことを条件にする場合もあるのだ。

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食事はきっちりジャンクフードずくしだったが、この日は地元で評判の中華ディナーを堪能した。そして、日曜日は、旧車好きやビンテージアイテム好きにはパラダイスな「ポモナスワップミート」にGO!。コロナの影響で開催を見合わせていたため、今回の開催はかなり久々とあって大・大盛況! 朝5時でも搬入関係の車両が大渋滞となるほどで、会場周辺ではオーバーヒートなどで立ち往生する旧車達があちこちに…。一般入場も大渋滞で、駐車後のチケット購入でも長蛇の列ができるほどだった。これまでに何度も訪れたことがあるが、今回ほど大盛況だったのは初めて!

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スワップミートでの買い物を楽しむ前に、販売車両をチェック。ありとあらゆる車種が展示されているのだが、あまりのボリュームに全てをチェックするのは不可能。実際に購入するかはともかく、気になるモデルが思いのほか安かったりと、ワクワクするはずが、近年はビンテージカーのバリューが軒並み高騰しており、予想以上に高かった印象。希少性以上に、ニーズが高まっている感じだった。とにかく、ポモナの盛況ぶりを見る限り、アメリカのモーターカルチャーは健在といった感じ。

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ボンネビルの塩湖から戻ったら、なにはなくともこびりついた塩を落とす!塩の状態が2021年は良かったが、シャーベット状態だと、びっしりと固着してなかなか落ちなかったりするのだ。

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近所に買い物に出かけてみたり。アメリカ依存症の自分の場合、平均的なスーパーマーケットでワクワクできる。スナック類のパッケージが美味しそうだこと!トミカがブリスターパック状態で販売されていた。工具はデザインが良くて安い。

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ポモナスワップミートの会場周辺は大渋滞となっていた。牛歩状態とあって、旧車たちがあちこちでオーバーヒートなどで立ち往生。チケットを買うのも長蛇の列。久々の開催で待ち望んでいたファンが一気に押し寄せたようだ!

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コルベットの中でもニッチな73年型がお買い得な感じだった。リアだけアイアンな過度期のモデルゆえ賛否が割れるとはいえ、仕様、状態が同等のカマロと比べたら半額ほどのバリュー!

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北米ではダッジ・チャレンジャー(82年型)、日本では三菱ラムダのほぼ新車状態の売り物が1万ドル!外観だけでなく、内装も見事なコンディションなだけにお買い得かも?!

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電動格納式のリアゲートがモダンでカッコ良い71年型シェビー・キングスウッド・ワゴン。オリジナル状態を保持しつつ、クレートモーターによってアップグレード済で13,000ドルならお買い得?!

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なんと、75年型のラグナS3に遭遇! NASCAR参戦モデルとして通常のマリブとは異なる専用スラントノーズなのがポイント。本気で欲しくて探してもめったに出てこない珍車。これは自慢出展の模様。


Photo & Text 石橋秀樹
アメ車マガジン 2021年 11月号掲載

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