同じフェイスでもキャラクターの異なる2台の魅力 ロードランナー&サテライトワゴン
VINTAGE MOPAR FANATICS
1970 PLYMOUTH ROAD RUNNER
1970 PLYMOUTH SATELLITE WAGON
矍鑠たるビンテージ・モパー
VINTAGE MOPAR FANATICS
フォードもいい、GMもいい、しかし、もっとも「アメ車らしく」、エキゾチックなのはMOPARだろう。コアなファンの多いMOPARだが、今回は矍鑠(かくしゃく)としている…年月が経っても元気に凛としている「ビンテージ・モパー」にスポットを当てることにした。一度ハマってしまったら逃れることのできない、魅力的なMOPARの世界へようこそ。
2017年の横浜ホットロッドカスタムショー でアワードを受賞した
ナオキモータービルド
の代表作であるサテライトワゴン。その存在をSNSで知って駆け込んだ同じモデルイヤーのロードランナー。同じフェイスが同じカラーで並ぶ姿は圧巻!
快適に走らせてこそのVintage Mopar!
1970年型のプリマスロードランナーとサテライトワゴン。同じモデルイヤーで同じカラー、同じフェイスをした2台の
プリマス
が揃うと聞いて早速大阪は堺市の
ナオキモータービルド
へ。
ナオキモータービルド
と言えば昨今は60年代、70年代のC‐10を中心にGM系のビンテージ車両を取り扱っている印象を強く受けるが、実は代表の宮田氏が愛用しているのが紹介するサテライトワゴン。
ちなみに2年ほど前には横浜ホットロッドカスタムショー に出展。アワードの受賞を皮切りにその後も様々なカーショーにおいて注目を浴びており、知る人ぞ知る名車だったりする。ロードランナーのオーナーもその情報をSNSで見つけ、偶然にも堺市の隣の和泉市在住で近所だったこともあり、連絡を重ねていく中でATの不具合を改善して欲しいと駆け込んだことがキッカケとなり意気投合。
ナオキモータービルド の的確な作業クォリティと豊富な知識の虜となって、今ではロードランナーの掛かりつけ医として些細なトラブルから重整備までを一任しているとの話だ。
しかし、宮田氏のサテライトワゴンみたいに仕上げて欲しいか?と聞かれるとそれはまた別の話。それぞれ異なる方向性ながら〝快適に乗りこなす〟を共通項とし、サテライトワゴンはショーカーとして、ロードランナーはオリジナルの良さを残しながらの改善に徹している点が特筆物。その全貌を詳しく紐解いていこう。
ハイウェイクルージングも片手でこなせる快適仕様がコンセプト!
60年代後半から70年代、マッスルカーの高級志向が年々高まっていくなかで、至れり尽くせりな装備をできるだけ控えて価格を抑え、若者に楽しんでもらえる様に登場したのがロードランナー。ワーナーブラザーズと契約を結び、同じ名前のキャラクターとコラボし、そのキャラクターの鳴き声「Beep」をモチーフにクラクションの音を再現したとの話からも、若者をターゲットにリリースされていたことが分かる。
一方で、ステーションワゴンのボディ形状からも分かるとおり、庶民的なファミリーユースを想定して登場したのがサテライトワゴン。収納されたサードシートを解放すれば7、8人の乗車も可能で、現在におけるミニバン的な使い勝手が人気を博した。
しかし半世紀の時を経た現在では、どちらも希少性が高くて当時と同じ様な感覚で乗るなんて恐れ多い。程度の良い個体が少ないことも相まって、なかにはコレクションの一台として大切に保管するユーザーも存在する。だが、クルマは走らせてこそその魅力が高まり愛着が湧くもの。飾ることを否定はしないが、やっぱり乗って楽しんでもらいたいのが
ナオキモータービルド
の本音である。
それを快適にこなすべくA/Cのアップデートやステアリングフィール、足回りの改善などをオーナーの意向に沿いながら進めていく点は特筆物。状況に応じてアキュエアーなどのトレンドアイテムを採用しつつ、当時物にこだわるオーナーにはそれ相応の装備で対応する柔軟な姿勢が多くのモパーファンを虜にする。
エンジンストールに怯えながらステアリングを握りアクセルを踏むのではなく、安心快適にビンテージモパーを嗜んでもらいたい。ハイウェイでもストリート、市街地で渋滞にはまったとしても終始安心して乗れるクルマに仕立て上げる。これが次世代を担う若きビルダーたちに課された使命であり、年々希少価値の高まるビンテージモデルを救う最善の策と言えるだろう。
1970 PLYMOUTH SATELLITE WAGON
ロードランナーと同じフェイスながらチンスポイラーの装着やグリルインナーをブラックでリペイントすることでスパルタンな印象に一新。オリジナルを忠実に守るか否かは好みであるが、トレンドカスタムが混在するサテライトには抜群に映える。
フロント8J、リア10JのSCHOTTホイールを履きこなすべく、ロードランナーのリア4リンクを加工流用してライドテック製のショックウェーブ、フロントはマグナムフォース製ドロップスピンドルを採用し、アキュエアーのエアーサスペンションシステムを導入。
グレー×ウッドトリムの外装からは一転してブルーにオールペイント。昨今のステーションワゴンでは味わえない繊細なフォルム造型美も特筆物。ラゲッジスペースの収納式サードシートは使用歴のほとんどない極上コンディションを誇る。
20年程前に流行ったRECARAのバイクIIIで操るステアリングフィールは、ユニステア、ラックピニオン化を施すパワーステアリングの恩恵を受けてハイウェイ走行時に片手を放しても安心してのドライビングが可能に。ビンテージエアー完備で夏場の酷暑対策も万全。
ホーリーキャブ、ビレットスペシャリティーズエアクリーナー、ビレットバルブカバーにパートロニック、デスビ換装、ビンテージエアーへのアップデートなど、一通り手を入れた318cu.inのV8エンジン。ナオキモータービルドで作業を行った証としてオリジナルのプレートを装飾。
1970 PLYMOUTH ROAD RUNNER
エントリーモデルのサテライトと、ハイエンドモデルのベルヴェデアの間を埋めるマッスルカーとして1968年にデビューしたロードランナー。黒くリペイントを施すサテライトワゴンに対して、こちらはオリジナルストックとなる。
細身の大口径ステアリングにコラムAT、必要最低限のメーターと高級志向の装備を控えながらも光沢感のあるブルーを基調にホワイトのパイピングが施されるレザーインテリアが好感を抱く。ホーンボタンやフロアマットのキャラクターマスコットも愛嬌抜群。
ピン止めのボンネットフードとマッスルカーらしさを強調するブラックのセンターストライプは、鮮やかなブルーのボディカラーとのコントラストが絶妙。ウィンカー操作時の点灯がメーターパネルではなく、ボンネットフードに忍ばせているところも実にユニーク。
68、69、70年と異なるフェイス、テール回りとなるなかで、70年型のテールはデザインもひと際個性的。大きく張り出したリアフェンダーに採用されたサイドダクトもこの年式特有の個性となり、ファーストモデルの集大成として根強い人気を誇る。
383Cu.inのスーパーコマンドV8エンジンを3速オートマチックで操作するドライブテレーン。最高出力335hpを発揮するオリジナルの良さはそのままに、ナオキモータービルドでAT不調を改善。今後ビンテージエアーの取り付け直しや、アンダーダッシュハ―ネス交換を進め、より快適に改善していくとのこと。
Thanks:Naoki Motor Build
TEL:072-236-7300
HP:https://naoki-mb.co.jp
■Photo&Text:石井秋良
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