リアルを知るからこそ成し得る、本物のカスタムペイント【Hammar】
カスタムペインターとして20年以上の経歴を持ち、カスタムシーンの最前線を走るハマーデザインのペインターHammar氏。数々の芸術作品を生み出す根底にあるのは、カスタムペイントのルーツや伝統の歴史を知りリスペクトすること。単身渡米から始まった、Hammar氏のペインターとしての歴史を紐解く。
アメ車のイジり方
ルーツを知らなければ、ただのコピーを描くだけ
伝統のオールドスクールを守り続けるカスタムペインター・Hammar
2015年に創業の「HAMMAR DESIGN(ハマーデザイン)]の存在は、アメ車・国産車のカスタムシーンに大きな衝撃を与えた。腕自慢のペインターによるカスタムペイントを施されたローライダーは数多くあれど、ハマーデザインのペインター・Hammar氏が手掛けた作品は、奇をてらわない王道のペイントにも関わらず、繊細な美しさは見るものを圧倒させる。

その芸術的なカスタムペイントは、本国アメリカの著名なペインターたちから高い評価を得ているのだが、ここだけの話、国内のペインターにはその「凄さ」を理解できる人が少なく、若輩のHammar氏をねたんだ目で見るペインターもいたという。
そのHammar氏とはどんな人物なのか。そして、誰にも負けないペイントに対する思いとは。

「僕の経歴のスタートは、よくある町の板金屋さん。年齢が倍以上ある職人に、毎日シゴかれながら板金塗装をやってました。カスタムなんて無縁です。でも仕事を覚えていくと、やっぱりカスタムペイントに興味がでてくる。そこで先輩と一緒にカスタムショップを始めたんですが、キャンディペイントのやり方も分からず、雑誌に載っているクルマを見よう見まねでやってました。ある程度のカタチになって満足してもらえていたんですが、自分の中で釈然としない思いもあったんです。その辺で覚えたペイントエフェクトを、とりあえず満遍なく入れているだけ。自分は一体何を表現しているのか。その答えというか、道筋が見えなかった。この状態でどれだけ描いても納得ができない。だったら、アメリカに行って著名なペインターのもとで修行してみようと。それがスティーブ・ディマンというカスタムペインター。正直、当時の僕は彼のことは知らなかったんですが、周りの人がアメリカのカスタムペインターといえばスティーブと言っていたので、来日している時に直談判しました。それから2年ぐらい、彼のショップで本場のカスタムペイント技術を教えてもらったんです」。

その後Hammar氏は、ローライダー発祥の地と言われるカリフォルニア南部のコンプトンで独立。「よく分からない日本人になんか、仕事なんて依頼しないですよね。でも、どんなに安いお金でも断らず、納期が厳しくてもそれを守ってクルマを仕上げていたら、現地のローライダークラブに話が広まって、大きなプロジェクトを貰えるようになったんです。とにかく向こうのオーナーは、自分のクルマに対する愛情や熱量が凄かった。地域的に貧しい人が多いんですけど、それでも自分のクルマは誰よりもカッコよくありたいと言う。そんなクルマを僕に任せるんだから、僕も生半端な気持ちで仕事はできない。仕上がりに納得してもらえなかったら、犯罪も多い地域なので…死ぬ気で頑張りましたよ(笑)」。
単身アメリカでの修行、そして現地での独立。Hammar氏がそこで得たものは、技術だけではない。渡米のきっかけとなった、カスタムペイントの道筋。この答えを導いてくれたのが、もう一人の恩師であるダニー・D氏だ。「彼もスティーブと同じく、アメリカのカスタムペインターとして著名な方で、彼には技術ではなく、カスタムペイントのルーツや歴史といった基本を教わりました。『カスタムペイントの古き伝統を守るオールドスクールこそ、君が求めている答えだ』と。キャンディペイントやリーフペイントにも誕生の歴史やヒストリーがあり、その伝統を俺たちが守り続けていると言われ、ずっとモヤモヤしていた視界が一気に広がったんです」。

本国アメリカの技術、そして根底にあるルーツを知り、本当のカスタムペイントを日本で表現しようと立ち上げたのがハマーデザインだ。そして、魂を込めて製作できる車両は一年で一台と決めている。「自分の人生のなかで一年をそのクルマに注ぐと思えば、依頼されるオーナーにも同等の熱量は求めます。お金ではなく、自分がやりたいと思うかどうか。50才で一区切りと思っているので、自分が手を掛けるクルマは後5台。偉そうに聞こえるかもしれませんが、これが僕のやり方です」。
Hammar氏に依頼することはできないかもしれない。だが、魂を込めて製作した作品は見ることはできる。それこそが、伝統のカスタムペイントだ。

ハマーデザインがユーザーから直接依頼を受け完全施工した車両だけに、上写真のようなナンバリングが描かれる。そして、Hammar氏が全てを手掛けた車両には、このナンバリングに加えて「#ナンバー」が追加される。Hammer氏が魂を込めて製作できる車両は1年に1台。それ故、#ナンバーが入る車両はかなり希少性が高い。

カスタムペイントで広く広まるエフェクトがフィンガープリント。指紋のような「幾何学模様」をマスキングによって造りペイントしていくものだが、これも恩師ダニー・D氏が生み出したもの。このエフェクトが生まれた経緯や秘話を、本人から直接聞いているのもHammar氏である。現在ハマーデザインには、それらのエフェクトを伝承すべく、Takuma氏(上写真)のようなペインターが数名在籍する。
亡き恩師ダニー・D氏のために魂を込めて製作した1969年型インパラ
墓前で車両を披露したときが本当の完成となる

Hammar氏のペインターとしての道筋を示してくれた、カスタムペインター ダニー・D氏。3年前に他界したことをきっかけに、Hammer氏が集大成として魂を込めて製作したのが1969年型インパラ。

エンジンルームのバルクヘッド部分にはダニー氏が描かれ、車両は彼のアイコンであるキャンディペイント、メタルフレークなどを盛り込み敬意を表している。これでもまだ未完成と言い、本当の完成はダニー氏が眠る墓前で車両を披露したときだ。

Painter : Hammar
HAMMAR DESIGN
所在地:茨城県かすみがうら市市川655ミカサウェアハウス
TEL:029-957-1467
URL:https://hammar-design.com
営業時間 :10:00~19:00
定休日 :年中無休
PHOTO:浅井岳男
TEXT:空野稜
アメ車マガジン 2026年3月号掲載
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