【2022 FORD F-150 ライトニング】本格EV化が進むピックアップトラック
2022 FORD F-150 Lightning
AMERICAN TRUCKS -ピックアップトラックの無限なる可能性-
2022 FORD F-150 Lightning ALL NEW MODEL
激化するEVモデル戦線はフォードがリード!?
全世界で進むEVモデルの開発は、ピックアップトラックが主流のアメリカでも同様だ。そしていち早く、ピックアップトラックのEVモデルを発表したのがフォード。主力のF-150にEVモデルの証となる「ライトニング」の名を与え、22年春からデリバリーが始まる予定だ。
マスタング・マッハEからフォードのEV化が加速
なんと、ライトニングがフルEVになって復活するとは驚きだ。いったいどういうことなのか?そもそも、ライトニングといえば、2001年に第10代目のF-150で導入された、ハイパフォーマンスモデルというイメージをお持ちのアメ車ファンが多いだろう。当時、アメリカでは空前のメーカー系チューニングブームが到来。独ダイムラーと資本関係にあったクライスラーが、HEMI搭載によるSRT(ストリート&レーシング テクノロジー)のラインアップを拡充させる戦法に出ていた。
これを受けて立つかたちで、フォードはマスタングなどでも活躍したフォード社内のSVT(スペシャル ヴィークル ティーム)がV8+スーパーチャージャー搭載でF-150・ライトニングを仕立てたのだ。
同車が市場に出回る直前、筆者は米カリフォルニア州内のウイロープリングスレースウエイでテスト車を全開走行させたが、そのジャジャ馬ぶりに、かなり手こずった記憶がある。
あれから20年の月日が流れた、2020年代。アメリカを含めて世界自動車産業界にはEV旋風が吹き荒れている。その背景には様々な理由がある。ひとつは、CO2排出量、または燃費に関する法規制だ。なかでも厳しいのが欧州のCO2規制だ。その目標達成値は2020年代にどんどん厳しくなることが決まっており、日米欧の自動車メーカーのパワートレイン開発部の責任者たちは「まずは、欧州対応が必須」という。その結果として、欧州市場向けにEVやプラグインハイブリッド車の導入が進んでいるのだ。
一方、EVやFCV(燃料電池車)など、いわゆるZEV(ゼロエミッション ヴィークル)の販売比率について規制する法律は、アメリカ・カリフォルニア州環境局の大気保全委員会(CARB)が定めるZEV法と、そのZEV法を参考にして米中政府が協議して作成した中国のNEV(新エネルギー車)規制がある。こうしたなか、フォードは主要モデルに「お求めやすい価格」でのEVグレードを導入するという戦略に出ている。
最初に導入されたのは、マスタング「マッハE」だ。マスタングでマッハといえば当然、在りし日の「マッハ1(ワン)」があり、そうした過去の栄光の再認識し新時代に向かう企業姿勢を示したかたちだ。ただし、「マッハE」はマスタングを名乗っていても、その風貌はクロスオーバーSUVだ。後輪駆動と四駆があり、トップグレードでは0-時速60マイル加速が3/5秒というスーパーカー級の加速、そして満充電で305マイル(約488km)。エントリーモデルは価格は4万ドル(400万円)代とリーズナブルだ。マッハEで培ったEV技術を応用して、F-150ライトニングが登場した。特長は、2000年代のようにライトニングというスペシャルモデルではなく、ガソリン車のF-150と同じようにライトニングシリーズとして、プロ、XLT、ラリアート、プラチナムとグレードをフルラインアップしている点だ。これは「これからはピックアップトラックでもEVが当たり前の世の中になる」とフォードの強い意志の現れだ。周知の通り、F-150はフォードの大黒柱なのだから。
F-150ライトニング・プロは、ベースモデルで満充電での航続距離は230マイル(368km)、オプション設定で300マイル(480km)。また2.4kWのオンボードチャージャーや最新型の運転支援システムフォードCoPilot360が標準装備となる。フォードとしては、GMシルバラード、ステランティスのラムトラックに先んじてF-150のEVフルラインアップ化に着手することで、来たるべき本格的なEV時代をリードしていく構えだ。
外装デザインはガソリンモデルと基本同様で、ボンネットもラゲッジスペースとなる。EVとなるF150ライトニングにはモーター2つが搭載される。バッテリーはスタンダードと大容量のオプションがあり、オプションでは563hpにもなるパワーを発生する。満充電でスタンダード約370km、オプションで約480kmの走行が可能となる。
TEXT/桃田健史
アメ車マガジン 2021年 9月号掲載
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