【アメリカNo.1自動車メーカーの誇り】ゼネラルモーターズの魅力を紐解く

コラム

アメマガ2019年11月号

ジーエム祭

米国No.1の自動車メーカー、ゼネラルモーターズ(GM)の歴史と製品ラインナップを紹介。この記事を読めばキャデラックからシボレーまで幅広いブランドとモデル、さまざまな顧客ニーズに応えるGMの戦略が理解できる!困難を乗り越えてきたゼネラルモーターズの魅力に迫る。
ジーエム祭
百花繚乱


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ジーエム祭
百花繚乱
アメリカにおけるセールス、知名度、ブランド数やファンの多さなど、総合的にナンバー1の自動車メーカーであるGM(ゼネラルモーターズ)。今回は魅力溢れるGM車にスポットを当てることにした。多くのブランドを誇るのもGMの特徴であり、ブランドごとの違いなどにも迫ることにしよう。

豊富なナリエーションとモデルをラインナップするGM


アメリカの自動車メーカーの中でも、セールス、知名度、ブランド数やファンの多さなど、総合的にナンバー1と言えるのがGM(ゼネラルモーターズ)だ。ビュイック・モーターを柱に、オールズモビル、キャデラックなどを次々と買収し、ポンティアック、シボレーと、次々とブランドを展開。フォードがT型の1車種で対応していたのに対して、GMは、最上級ブランドのキャデラックによるラグジュアリーな路線や、カジュアルなシボレーなど、キャラクターの異なるブランドによって、豊富なバリエーションのモデルをラインナップし、多種多様なニーズに対応した。
様々な人種が共存する大国アメリカにおけるニーズの幅は広く、所得の差も極端なため、様々な層に対応するモデルをラインナップさせるだけでなく、1920年代の時点で、いち早くオートローンやクレジットを導入。ドイツのオペル、イギリスのボクスホール、オーストラリアのホールデンを傘下に収めることで、グローバル化も進み企業としても拡大。戦後にはアメリカ最大の企業に成長した。
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あらゆる面で豊かだった50年代には、キャデラックは成功者の証として憧れの対象として定着。スタイリング、装備、技術面においても頂点を極める存在に。また、アメ車きってのスポーツカーのコルベットや、60年代初頭には、インターミディにフルサイズの大排気量V8を搭載させる、メーカー純正ホットロッドとも言える「マッスルカー」のカテゴリーをポンティアックが開拓するなど、ホビーとしての魅力の高いモデルも続々とラインナップし、幅広いファン層を獲得した。現在においてコレクタブルな存在となっている名車といわれるモデルの殆どが、この時代に集中しているのだ。
70年代はオイルショックの影響により、それまでとは真逆のエコノミーへのシフトを余儀なくされ、ヨーロッパ車や日本車に市場を奪われる。そうした流れの中で、いすゞとの提携が生まれ、共同開発によるモデルのリリースの他に、いすゞ車やスズキ車をベースにしながらも、GMのバッジエンジニアリングとしてシボレーの下位ブランドとしてGeo(1989~1997)が設立され、日本ではヤナセで販売された。
80年代に入っても、エコノミー路線は変わらず、スポーツモデルであっても、世界的にみてポテンシャルが極端に抑えられる中で、ビュイックは、リーガルをベースにターボチャージャーでモディファイしたGN、GNXをリリース。最強のGNXの1/4マイル走行においては、フェラリーF40、ポルシェ930ターボを凌ぐパフォーマンスを発揮!事実上80年代最強モデルに君臨する。80年代中期には、クライスラーが開拓したミニバン人気に対抗してリリースしたアストロが、メリカ以上に日本でブレイクし、アメ車人気再熱のきっかけに大きく貢献。
90年代では1500、カプリス、インパラSSなどの人気モデルを数多くラインナップ。現時点でビンテージな存在となったことで、魅力が再評価されている。ブランドに対するアドバンテージがどうあれ、魅力的なモデルを挙げていくと、圧倒的にGM車が多く、パーツ供給やアフターマーケットによる拡張性の高さなど、様々な面でメリットが多い点でも魅力が高いのである。

現在はキャデラック、ビュイック、シボレー、GMCの4ブランドを展開


現在のGMを担うブランドは、キャデラック、ビュイック、シボレー、GMCの4ブランドに整理されている。ハイエンドのキャデラックでは、セダン、SUVの2本柱による10車種をラインナップ。その下部を担うビュイックも同様に、セダン、SUVによる6車種をラインナップ。日本では正規輸入が無くマイナーな存在となっている。
GMの主力ブランドを担うシボレーでは、コンパクトからセダン、SUV、ピックアップトラックからコルベットに至るまで、あらゆるジャンルを網羅。GMCはトラック専門部門ながら、近年はSUVが主力となっているだけに、ユーザー層が拡大。シボレー同様にホビーのフィールドでも人気ブランドとしてファンが多い。
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日本では日本ゼネラルモーターズ(GMJ)とゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン(GMAPJ)の2社体制であったが、2011年にゼネラルモーターズ・ジャパンとして統合された。キャデラックとシボレーの2ブランド体制となっている。

近年ではオールズやポンティアックなどのブランドが消滅


長い歴史の中で、GMがこれまでに保有したブランドは40近くにも及ぶ。その大半は戦前に集中しており、買収と同時に統合されているため、GMのブランドとして運営されたケースはごく僅かではある。
ちなみに、おなじみの存在ながらも、廃止されたブランドは、近年に集中している。89年に設立したジオは、いすゞ車をベースにするなど、GM内の最下層ブランドを担っていたが、97年に廃止。1897年からの最も古いブランドであるオールズモビルも、2004年に廃止。
そして1926年より、様々な面でGMに革新をもたらしてきたポンティアックも、2010年に廃止。さらに同年には、サターンとハマーも廃止されている。
多様なニーズに対応するべく誕生したブランドも、それぞれのポジションを確立するのは難しく、GMの経営破綻が引き金となり消滅してしまったのである。
 

Cadillac【キャデラック】



成功者の証としてのステイタスが確立されているアメリカを代表する最高級ブランド。古くから各界のセレブリティが所有し、大統領専用車両に採用されていることでもお馴染み。70年代後期以前の絶頂期には、2ドアにして6m近い巨大なフルサイズで贅沢を極めていた。時代の変化にそぐわず低迷期もあったが、現在ではSUV、クロスオーバーなどトレンドに合わせて対応したモデルをラインナップすることで、王者としてのステイタスと人気を保持している。
1959 Cadillac Eldorado
1959 Cadillac Eldorado
 

Chevrolet【シボレー】



シボレーのネーミングは、スイス出身のGMレースドライバー、ルイ・シボレーに由来する。発音しにくいこともあり、シェビーの愛称でアピールした。スポーツモデルを含む、低価格帯の普及モデルを担うブランドとして発足しながらも、事実上GMの核として機能する。コンパクトからピックアップまで幅広いラインナップで、アメリカでナンバー1セールスを誇るブランド。日本ではゼネラルモーターズ・ジャパンによって正規輸入がされているが、ラインナップはコルベットとカマロに限定されている。
1969 Chevrolet Camaro
1969 Chevrolet Camaro
 

Buick【ビュイック】



往年のモデルには、カスタムの世界でも定番人気となっているリビエラや、マッスルではGN、80年代では世界的に最強を誇るGNX など、自動車史において無視できない重要なモデルも少なくない。キャデラックの一つ下の高級ブランドながら、国内では正規がないこともあり、ブランドバリューが成立していないが、他のアジア圏ではBMWやACURAに並ぶ人気を誇る存在。そのため、ラインナップもセダン、SUVによるラグジュアリー指向で統一されている。盾が3つ並んだロゴは、“トライシールド” の愛称で親しまれている。
1963 Buick Riviera
1963 Buick Riviera
 

GMC【ジーエムシー】



ラピッド・モーター・ビークル・カンパニーとリライアンス・モーター・カー・カンパニーのトラックメーカー2社を買収し、ゼネラルモーターズ・トラック・カンパニーとして統合。1911年より続けたヘビーデューティな大型トラックの部門は、1989年で撤退。ライトトラックを主流とする中で、シボレーとの差別化をアピールすべくS10、ジミーのハイパフォーマンス仕様としてターボチャージャーで武装するタイフーン、サイクロンをリリース。シボレーに対して商用ユーザーが多い中、ユーコンにラグジュアリー仕様としてデナリを設定したり、乗用ユーザーの獲得を図っている。
2007 GMC Yukon
2007 GMC Yukon
 

Pontiac【ポンティアック】



ブランド名はデトロイトのネイティブ・アメリカン“ ポンティアック酋長” に由来し、モデル名にチーフ(酋長)を多用したり、酋長のイメージを広告などではアピールしていた。シボレーの一つ上に位置し、優美さや独創性の高いスタイリングが特徴的。ジョン・Z・デロリアンらによって打ち出されたマッスルカーのルーツとも言えるボンネビルやGTO、そしてファイヤーバードなど歴史的な名車が60~70年代に多くリリースされた。GM内では最も意欲的なアプローチを進めていた。それだけに、熱心なファンが多いのも特徴。
1968 Pontiac GTO
1968 Pontiac GTO
 

Hummer【ハマー】


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アメリカ軍の中東の砂漠での運用を目的とする軍用車“ハンヴィ”(この頃はAMジェネラル社)の民生仕様としてのH1のラインナップと同時に92 年に設立されたハマー。続いてH1のイメージを採用しながらも、シボレー・タホをベースとしてプレミアムなSUVとしてH2を02年にリリース。06年には、よりコンパクトなシボレー・コロラドをベースにH3をリリース。国内ではアメ車の枠を超えて、高級SUVとして人気となった。GM 経営破綻とともに終了。買収もまとまらず2010年に消滅。
2004 Hummer H2
2004 Hummer H2
 

Oldmobile【オールズモビル】



1897年に設立したオールズ・モーター・ビークル・カンパニーを1908年GMが買収。以後107年間にわたりGMの1ブランドとして運営されてきたが、2004年を持って廃止となってしまった。ファミリー層から中高齢層をターゲットとする保守的なブランドながら、世界初のFF車としてトロネードをリリースするなど、実験的なアプローチも少なくない。80年代以降では、バッジエンジニアリングがほとんどで、ブランドの特色が薄れて低迷の末、幕を閉じた。
1969 Oldsmobile 442
1969 Oldsmobile 442
 

Saturn【サターン】



ヨーロッパや日本のコンパクトカーが主流となった市場に当てがって85年に設立。コンパクトカーのユーザーの中でも、ホワイトカラーや女性をターゲットとし、販売店であるディーラーのマイナスイメージを一新すべく、ディーラーではなくリテーラーと呼び、営業面ではノープレッシャー接客や、値引きなしの価格設定などを取り入れ、誠実さを打ち出した。多少の凹みであれば復元可能な樹脂製ボディーパネルの採用など、ユニークな面も含め、一定の支持が得られたが、経営破綻の末、2010年に廃止。日本では97年より展開するも01年には撤退。
2002 Saturn Vue
2002 Saturn Vue

Photo & Text 編集部
アメ車マガジン 2019年 11月号掲載

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