過酷な鈴鹿10時間レースで躍進! シルバークラスで殊勲の2位入賞

イベントレポート

鈴鹿10時間レース

アメマガ2019年11月号

ジーエム祭

ジーエム祭
SUZUKA 10 HOURS 2019
The 48th SUMMER ENDURANCE 
BH AUCTION SMBC


Callaway Competition with BINGORACING?

Callaway Corvette C7 GT3-R

GT3の“世界一決定戦”として2018年にスタートした鈴鹿10時間レースでアメリカンマッスルのキャラウェイ・コルベットが躍進!数多くのライバル車両が脱落するサバイバルレースとなるなか、6.2?V8サウンドを響かせながら真夏の10時間レースを走破し、総合26位、シルバークラスで殊勲の2位入賞を果たした。

デイトナ24時間を制覇!アメリカンGT3が上陸

読者諸兄は「FIA‐GT3」をご存知だろうか? レースファンなら良く耳にする言葉だが、FIA‐GT3は文字どおり、2005年にFIAがプライベーターのために設立した車両規定で、ドイツのニュルブルクリンク24時間レースやベルギーのスパ・フランコルシャン24時間レース、アメリカのデイトナ24時間レースなど国際的なビッグレースで同規定を採用。

さらにブランパンGTシリーズなどのリージョナル選手権や世界各国のナショナル選手権に同規定が採用されるなど、世界的に普及している国際規定だ。 日本でもスーパーGTのGT300クラスやスーパー耐久のST‐Xクラスに採用されるなど、身近なレギュレーションとなっているが、これだけ世界各国に普及しているだけに、多くの自動車メーカーが同規定に沿って開発したGT3モデルをラインナップ。

カスタマー用の車両としてプライベーターチームにGT3を供給するほか、ビッグレースには自動車メーカー直系のワークスチームやサテライトチームが参戦しているが、その車種ラインナップは他の規定に例がないほど多彩となっている。 具体的には「BMW M6 GT3」「メルセデスAMG GT3」「アウディR8 LMS」「ポルシェ911 GT3R」といったジャーマンスポーツを筆頭に「フェラーリ488 GT3」「ランボルギー・ウラカン GT3」などのイタリアンブランドもGT3をラインナップ。

さらに「ベントレー・コンチネンタル GT3」や「アストンマーチン・ヴァンテージAMR GT3」「マクラーレン720S GT3」のイギリスブランドのほか、日本メーカーも「ニッサンGT‐Rニスモ GT3」や「ホンダNSX GT3」「レクサスRCF?GT3」をリリースしている。 つまり、GT3市場は大盛況を迎えているのだが、この激戦区にアメリカンマッスルも参入。

そのマシンこそ、ここでクローズアップするシボレー・コルベットC7をベースに開発された「キャラウェイ・コルベットC7 GT3‐R」にほかならない。同モデルは2015年のデイトナ24時間レースやセブリング12時間レースで優勝するなど豊富な実績を持っているが、その名車が日本に上陸した。2019年8月23~25日、三重県の鈴鹿サーキットを舞台に開催された「鈴鹿10時間レース」に同モデルがエントリー。GT3の世界一決定戦と謳われる過酷な耐久レースにコルベットがチャレンジした。

最大の武器はリニアなトルク性能にあり!

ロングホイールベースで、抜群の安定性を発揮!

1966年にスタートして以来、日本の夏のビッグレースとして定着した「鈴鹿1000kmレース」を受け継ぎ、2018年よりFIA‐GT3の世界一決定戦として新たなスタートを切った鈴鹿10時間レース。賞金総額が1億円となっているだけに、2度目の開催となる2019年の大会にも国内外から数多くのチームが参戦していたが、そのなかでもっとも注目を集めていたのが「キャラウェイ・コンペティション・ウィズ・ビンゴレーシング」が投入した37号車、イエローのワークスカラーに彩られたキャラウェイ・コルベットC7 GT3‐Rだった。

前述のとおり、同モデルはシボレー・コルベットC7をベースに開発されたGT3規定モデルで、ドイツで豊富な実績を持つコンストラクター、キャラウェイ・コンペティションが開発を担当している。そのキャラウェイと名古屋で世界のスーパースポーツを取り扱うビンゴレーシングがパートナーシップを結んだことで、2018年より鈴鹿10時間レースに参戦が実現しており、2017年の大会では総合26位で完走を果たした。

今大会は2度目のチャレンジで、ドライバーに関してもチーム代表の武井真司選手を筆頭に、F3やスーパー耐久で活躍してきた小河諒選手、さらにコルベットを武器にドイツのGTシリーズ、ADACマスターズで3勝を挙げているキャラウェイのワークスドライバー、マーカス・ポマー選手が加入するなどドライバーも豪華な顔ぶれだ。

キャラウェイで同マシンの開発を手がけてきたテクニカルディレクター、マイク・グラムジェ氏によれば「GMはFIAへのホモロゲーション申請でサポートしてくれているが、基本的にマシンの開発やレース運営は自分たちで行なっている」とのことだが、その一方で、武井選手は「キャラウェイはコンストラクターなので、何かあった時の対応が早い」と語る。

まさにキャラウェイ・コンペティション・ウィズ・ビンゴレーシングはコンストラクター直系のワークスチームとして充実した体制を持つが、気になる主力モデル、キャラウェイ・コルベットC7 GT3‐Rも抜群の仕上がりとなっていた。 同モデルの最大の特徴となるのが、オランダのエンジンチューナー、APPレーシングが手がけた6.2?のV型8気筒エンジンだ。

クラストップレベルの排気量を誇る同エンジンのパワーは絶大で、キャラウェイのマイク氏は「エンジンがトルクフルに仕上がっているので、コントロールがしやすくなっている」と語る。さらに鈴鹿10時間レースでステアリングを握ったドライバーのひとり、小河選手も「コルベットC7 GT3-Rは純粋なレーシングカーに仕上がっていますが、ベースモデルのアメリカンマッスルの雰囲気も色濃く残しています。

ロングノーズでホイールベースが長いことから、鈴鹿のような高速コースで安定しているし、エンジンも大排気量の自然吸気なので、リニアにトルク感を発揮してくれる」とインプレッション。また「オートマチック制御の最新のGT3に比べるとコルベットはドライバーの負担が大きいし、トップスピードも速くはないけれど、アメ車らしいビーストな部分を感じられて、闘争心が湧いてきます」と評価が高い。

それにチーム代表でもある武井選手も「他のGT3と比べると空力パッケージに関してもダウンフォースのレベルは高くないですが、職人の技術で作られているので扱い易いし、市販車との距離が近いので、きちんとコルベットを感じられる」と好感触。それだけに2019年の鈴鹿10時間レースでもキャラウェイ・コンペティション・ウィズ・ビンゴレーシングが注目を集めており、その期待に応えるかのよう、同チームのコルベットC7 GT3‐Rは素晴らしいパフォーマンスを披露していた。

ノートラブルで走破、価値ある表彰台を獲得

2019年の鈴鹿10時間レースは8月23日、雨の練習走行で幕を開けた。この日は午後のフリー走行、夜間のフリー走行ともに雨にたたられたことで「コルベットはFRモデルなのでウェットではミッドシップ車両が有利」と小河選手が語るように、コルベットは苦戦の展開。さらに24日の予選は好天に恵まれ、ドライコンディションのなかでタイムアタックが行なわれたものの、小河選手によれば「マシンもドライビングも詰め切れなかった」とのことで、同チームのコルベットは総合27位、シルバークラス3位に止まった。

このように苦しい立ち上がりを見せていたコルベットだったが、25日の10時に幕を開けた決勝では終始コンスタントな走りを披露していた。「暑さの影響なのか、1回目のピットインで足が肉離れを起こして、ピットロードで速度違反を取られてしまいました」と武井選手が語るように、レース序盤でドライブスルーペナルティを受けるシーンも見られたが、武井選手のスティントを減らすオペレーションを採用することでコルベットは安定した走りを披露し、大きなトラブルにたたられることなく同日20時にチェッカー。

「1位には届かなかったけれど最善を尽くせました」と小河選手が語れば、「コルベットでこの成績を残せたので良かった」と武井選手も笑顔で語るように、キャラウェイ・コルベットC7 GT3‐Rは総合26位、クラス2位で完走を果たし、シルバークラスで表彰台を獲得する結果となった。

なお、2019年に登場したミッドシップモデル、シボレー・コルベットC8でのマシン開発およびレース活動の継続はまだ決定していないようだが、キャラウェイのマイク氏は、「ベース車両として注目している。条件が整えば、新型コルベットでもGT3を開発したい」と語っているだけに、今後の動向に注目したい。

カスタマー向けのGT3規定モデルとはいえ、室内も本格的な仕上がりだ。安全装備の強化のほか、シート位置を後方にオフセットするなど慣性マスの集中化も追求されている。

6.2LのV8型NAエンジンを搭載。クラストップレベルの排気量で、抜群のトルク性能を誇る。エンジンチューニングを手がけたのは、オランダのAPPエーシングで、コントロール性を重視した味付けになっていることから、「リニアなトルクで扱い易い」と小河選手が語るようにドライバーからの評価も高い。独特の低重音サウンドも魅力的だ。

サスペンション形式はベース車両と同様に前後ともにダブルウィッシュボーンを踏襲。ブレーキはブレンボ勢のシステムが採用され、冷却用のダクトホースがホイールハウス内にレイアウトされている。ちなみに鈴鹿10 時間レースはピレリタイヤのワンメイクで争われており、同タイヤに合わせてセッティングが煮詰められている。

インパネやステアリングも機能性を追求。操作性を追求すべく、ワイパーやアラームなどのスイッチ類はステアリングやセンターコンソール付近にレイアウトされている。

ピット内にオペレーションルームを設置。様々な情報を表示するモニターが並ぶ。ここに日独のドライバーおよびスタッフが集結。ちなみにビンゴレーシングのエンジニア、金室洋之氏によれば「ロングホイールベースなので重量バランスに優れている。中高速コーナーが安定性している」とコルベットを分析。

キャラウェイのワークスドライバー、マーカス・ポマー選手も参戦。キャラウェイはコルベットを武器にADACマスターで2017年のタイトルを獲得するなど、ドイツでも豊富な実績を持っており、ボマー選手も今季は3勝をマーク。コルベットを知り尽くしたドライバーとして鈴鹿10時間レースで活躍した。

キャラウェイ・コンペティションでテクニカルディレクターを務めるマイク氏も鈴鹿10時間レースに帯同した。気になるミッドシップの新型モデル、C8でのレース活動について「まだ決まっていない」としながらも、「興味のあるマシンなので個人的には新型でGT3を開発したい」とのこと。

「純粋なレーシングカーながら、ベース車のビーストな雰囲気が残っています。ホイールベースが長いので高速コーナーが安定しています」とマシンを分析する小河選手。「優勝はできなかったけれど最善は尽くせました」と語るように決勝ではコンスタントな走りを披露し、シルバークラスでの2位入賞に貢献した。

2度目の挑戦となった2019年の鈴鹿10時間で、イエローのコルベットは安定した走りを披露。ピットレーンの速度違反でドライブスルーペナルティを受けたものの、大きなトラブルにたたられることなくチェッカーを受けた。シルバークラスで2位に入賞。価値ある表彰台となった。


★ PHOTO&TEXT:廣本 泉


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