【トレイルブレイザー】GMが出した答えは まさかのコンパクトSUV化
2021 CHEVROLET TRAILBLAZER
2021 CHEVROLET TRAILBLAZER
2000年代初頭に日本にも導入されたシボレー・トレイルブレイザー。無骨なスタイリングのアメ車SUVが揃うなか、スタイリッシュで優等生モデルとして人気を得た。しかし09年に北米市場からも消え、二代目はひっそりと東南アジアなどで販売された。そして今春、2021年モデルとして11年ぶりに復活する。だがその姿は、馴染みのあるミッドサイズではなく、コンパクトSUVとしてだが…。
懐かしい初代、日本では無名の二代目
トレイルブレイザーという車種名。日本では久しぶりに聞く方も多いのではないだろうか。2020年春から北米市場向けで、11年ぶりに復活する。
シボレーブランドの歴史を振り返ってみると、60年代から90年代までブレイザーが、当初はフォード・ブロンコの対抗馬として、農業事業者向けや商用車というイメージが強かった。それが80年代から90年代にかけて、ジープ・チェロキーやフォード・エクスプローラーなどが乗用SUVとして人気となる中、ブレイザーも根強い人気車となった。車体はミッドサイズピックアップトラックのS10をベースとした。デザインは、兄貴分であるフルサイズSUVのタホとの共通性を持たせたことが販売で奏功した大きな要因だ。
2000年代に入ると、ブレイザーをさらに大型化したモデルという位置付けで、シボレー・コロラドをベースとしたトレイルブレイザーが登場。SUV市場が拡大する中、フォード、クライスラー(当時)だけではなく、日系や欧州系メーカーへの対抗策だった。ところが、年を追うごとにSUV市場の中での商品性が中途半端な存在となってしまい、事実上のモデル廃止となった。
ただし、モデル名だけは継承され、まったく違う目的のクルマとして生まれ変わった。南米、東南アジアなど新興国や発展登場国向けの世界戦略車となり、アメリカや日本などでは正規販売がなくなった。ライバルは、三菱・チャレンジャー/モンテロスポーツや、シボレー・コロラドの車体を使ういすゞ・MUXなどと、日本では馴染みのないタイプのSUVたちだ。そのため、第二世代トレイルブレイザーは日本では、その存在自体が知られていない。
北米SUVシフトが生んだ新星モデルはいかに?
第三世代となったトレイルブレイザーは、初代や二代目とは似ても似つかない、まったく違うカテゴリーのSUVとして生まれ変わった。なんと、コンパクトSUVに様変わりしたのだ。
外観デザインでは、フロントマスクにトレイルブレーザーっぽさが少しだけ残っている印象はある。だが、ボンネットの位置が低く、しかもクーペライクなフォルムに初代トレイルブレーザーの面影はない。アメ車というよりは、フランスPSA(プジョー・シトロエン)のようなイメージに見えてしまう。
シボレーのモデルラインアップで見ると、新生トレイルブレーザーは車格も価格も明らかに、ブレイザーやイクイノックスよりも下位にある。搭載エンジンは1.2Lターボと1.3Lターボ。北米での価格は、1万9000ドル(約198万円)である。AWDの設定もあり、スノーモードやスポーツモードの切り替えによって、いわゆる生活四駆とした生活アイテムという商品コンセプトである。
こうした新生トレイルブレーザー登場の背景には、過去10年間で一気に進んだ北米市場でのSUVシフトがある。従来のミッドサイズSUVとフルサイズSUVは他モデル化や超高級化が進むと同時に、販売台数ではアメ車の大黒柱だったC/DセグメントセダンからSUVへのシフトが一気に進んだ。このような新しいSUV需要層に対して、コンパクトSUVというカテゴリーの厚みが増した。その中で、トヨタ・RAV4はコンパクトSUVとしてはかなり大柄となり、本格的なオフロード走行を可能とするAWDシステムを導入。GMとしてもコンパクトSUVの多モデル化が必須となるなか、SUVモデルラインアップを段階的に変化させた結果、小さめのコンパクトSUVとして、新生トレイルブレーザーが生まれた。 正直なところ、アメリカ人にとって、トレイルブレーザーといえば初代のイメージが強く、初代ユーザーが第三世代にダウンサイジングすることは考えにくい。
日本市場でも、同様の感覚を持つ方が多いのではないだろうか。仮に、新生トレイルブレーザーを日本で販売した場合、アメ車ファンに受け入れられるかどうか、大いに疑問だ。
全長4406mmはトヨタC-HRと同等サイズ
グレードはL・LS・LT・ACTIV・RS 5種類。エンジンはECOTEC 1.2Lターボ、ECOTEC 1.3Lターボの2種類を設定している。FFとAWDを選べ、AWDは9ATでFFはCVTとなる。廉価モデルで1万9000ドル。2トーンルーフカラーでパノラマサンルーフ付き。全長4406mmのボディサイズとなれば、ジープ・コンパスやトヨタ・C-HRといったモデルと同程度といえる。
最新の運転支援システムや安全装備を充実させ、生活四駆に特化した内容だ。リアシートは60:40分割加倒で、1540Lという容量を積むことが可能。助手席もフラットに収納でき、約2590mmのロングスペースが確保できる。
【SPEC:トレイルブレイザー RS】
●全長×全幅×全高:4406 ×1808 ×1656mm ●ホイールベース:2639mm ●エンジン種類:ECOTEC 1.3L Turbo ●最高出力:155hp/5600rpm ●最大トルク:24.0㎏ -m/1500rpm ●トランスミッション:CVT ●乗員:5人
あまり知られていないが二代目トレイルブレイザーは東南アジアなどで活躍している
初代トレイルブレイザー(2001-2009)
2代目トレイルブレイザー(2012-2020)
日本でも正規販売された初代トレイルブレイザーは、当時のSUVのなかでも装備面などで優れ、スタイリッシュなデザインも合わさり人気が高かった。北米や日本では初代で消滅したモデルになっているが、2代目は2012年からタイなど東南アジアなどで登場し、現在も販売されている。
TEXT /桃田健史
アメ車マガジン 2020年 6月号掲載
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