いつだって僕らは、フォードが大好きなのだ!
SOUL OF FORD
100年に一度の大変革時代、フォードには今、何が起きているのか
衰退か、発展か、フォードに大きな変化が訪れる予感
Fシリーズという王道を貫く
残念ながら、日本市場から2016年に撤退してしまったフォード。今、本国アメリカでフォードはどうなっているのか、アメ車ファンなら当然気になるところだろう。だが、そんなご心配は無用。フォードはフォードらしく、いまもFシリーズという王道を貫いている。
フォード全体の販売台数を見てみよう。直近の19年3月では、24万3021台で前年同月比3.5%と微増。メーカー別で見ると、第1位のGMは29万6138台、第2位がフォード、そして第3位のFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が21万1943台と続く。
次に、フォードの販売台数を「カー」と「ライトトラック」に分類してみる。「ライトトラック」とはピックアップトラック、SUV、クロスオーバーを意味する。すると、「カー」はフォード全体の22%の5万2635台、残りの78%が「ライトトラック」となる。一般的に、フォードは「トラックカンパニー」と呼ばれているが、いまでもそうした状態が続いている。
さらに、モデル別売上ランキングでも、相変わらずFシリーズがトップ。直近の19年3月では第2位のGMシボレー・シルバラード(5万2547台)、第3位の日産SUVのルージュ(4万2151台)を大きく引き離す、8万7011台を達成している。
「Fシリーズを買っておけば、まあ安心」。そんなアメリカ人の常識が、長くFシリーズの快進撃を後押ししている。
モデルラインアップも王道のまま?
Fシリーズ以外の「ライトトラック」は、Fシリーズと車体を共有するフルサイズSUVのエクスペディション、ミッドサイズSUVのエクスプローラー、クロスオーバーのエッジとFLEX、そしてコンパクトSUVのエコスポーツがある。このラインアップは2000年代中盤からほとんど変わっていない。正直なところ、クロスオーバー系はデザイン的に古さを感じる。そろそろ刷新の時期かもしれない。
特に、昨今の北米市場では、中小型セダン(C/Dセグメント)からコンパクトSUVへのシフトが一気に進んでおり、エコスポーツ一本では明らかな戦力不足だ。
一方の「カー」についても、商品の新鮮味が薄い印象がある。欧州フォードの流れを汲むフィエスタ、フォーカス、フュージョン、トーラスと、2000年代から代わり映えしない。そうした中、「カー」のイメージリーダーは相変わらず、マスタングだ。近年は、NASCAR参戦モデルもマスタング調のデザインを踏襲し、フォードのスポーティ性を強調するマーケティング戦略を打っている。マスタングのハイパフォーマンス系は当然、シェルビーが請け負う。
保守的なラインアップは、VW協業の影響か?
では、フォードはどうして、ラインアップが大きく変わっていかないのか。それは、独フォルクスワーゲングループ(以下、VW)との協業が大きく影響しているようだ。フォードとVWは19年1月、電気自動車など次世代自動車開発で全面的に協業すると発表した。フォードはこれまで、フォーカスEVの開発と製造を大手部品メーカーのマグナインターナショナルに委託してきた。また、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車では自社開発としてきたが、アメリカ国内での販売実績はけっして良くなかった。
一方、VWは16年に経営方針として「EVシフト」を掲げ、VWグループ企業のアウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー、セアト、シュコダなどでEVやプラグインハイブリッド車の多モデル化を強力に推進している。こうしたVWのEVシフトは、中国での新エネルギー車規制や欧州でのCO2規制を睨んだもの。フォードとしては、苦手な中国市場の規制強化を受けて、VWと手を組むことを決めた模様だ。
こうした電動化の連携は当然、プラットフォームの共通化も視野に入るはずだ。となると、前述のように小型車からスーパーカーまで多彩なモデルラインアップを取り揃えているVWグループから、フォードへのOEM供給が増える可能性がある。具体的には、「カー」の分野ではフォードとVWが全面的にモデル連携してもおかしくはない。もしそうなると、おそらく、マスタングはVW兄弟車がベース車となるが、シェルビーなどスペシャルモデルは独立したモデルになる可能性がある。まるで、日産GT-Rのような感じになるかもしれない。
自動車産業界はいま、100年に一度の大変革期と言われている。そうした荒波を乗り越えるため、フォードにもこれから大きな変化が訪れそうだ。
解説/モータージャーナリスト・桃田健史
アメ車マガジン 2019年 6月号掲載
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