ロッド&カスタムシーンの最重要イベント「グランドナショナルロードスターショー」
GRAND NATIONAL ROADSTER SHOW
2020 JANUARY 24-26 Pomona, CA
GRAND NATIONAL ROADSTER SHOW
2020 JANUARY 24-26 Pomona, CA
アメリカのカーカルチャーの殿堂にして金字塔
世界一長い歴史を誇るインドアカーショーGNRS
ロッド&カスタムにおける世界一の栄冠を競い合うミスユニバース級の美の祭典が「グランドナショナルロードスターショー」だ。本イベントは、世界一長い歴史を持つインドアカーショーとして知られているが、アメリカズ・モースト・ビューティフル・ロードスター(AMBR) 賞のノミネート車を筆頭に、全米屈指のショーカーがポモナに集結したので、レポートしよう!
ホットロッドやカスタムは、日本の感覚では、改造車としてネガティブなイメージがあったりするが、アメリカでは、数ある自動車趣味のジャンルの中でも、ある意味頂点的な存在となっている。そもそもホットロッドとは、ストリートなどので速さを競う違法な遊びを、安全性と娯楽性を確保して、NHRAやNASCARといったアメリカを代表するモータースポーツへと発展させた。
また、見た目の格好良さや美しさを自慢する上では、ダイナーでのクルーズや、カークラブでのミーティングなどが、カーショーに発展し、長年にわたり、全米を網羅する大規模なナショナルイベントに成長したり、クラッシックカー・コンテストの世界的に最も権威ある、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスにおいても、ホットロッドやカスタムのカテゴリーが設定されるに至っている。
頂点を極めるような個体に投入される予算も、億単位も珍しくないほどで、自宅ガレージでコツコツとバックヤードビルドする庶民から、大規模なプロジェクトとしてチーム体制で取り組むセレブまで、様々な人達が、同じフィールドで、同じ温度で楽しんでいるのが印象的。
ここでフィーチャーする「グランド・ナショナル・ロードスターショー」は、アメリカ西海岸では最も権威あるロッド&カスタムの祭典として、71年の歴史を誇る。アメリカで最も美しいロードスターに送られる名誉ある賞、A.M.B.R.( アメリカズ・モースト・ビューティフル・ロードスター)を筆頭に、様々なスタイルやカテゴリーごとにアワードが用意され、受賞を目指す、アメリカ国内だけにとどまらず、海外からも、業界屈指の秀作が大集結するのだ!
ビルダーのセンスと技術力が問われる、ホットロッダーの頂点がここに集結!
ストリートロッドにおける頂点は、速さと美しさを兼ね備える、ロードスターというのがお約束。“ ホットロッダー” の語源には、ホットなロードスターという説もあるほど。そのため、グランドナショナルロードスターショーでは、最も美しいロードスターを選定するA.M.B.R.( アメリカズ・モースト・ビューティフル・ロードスター) がハイライトとなっている。
そこでは、セオリーを重んじるトラディショナルなスタイルが主流で、一見すると、同じように見えたとしても、細部に最新の技術が盛り込むなどして、オリジナリティをアピールするケースが多い。中には、一見ストック風に見えても、ほぼ全てを独自にワンオフしたパーツで形成するといった、メーカーのコンセプトカーをも凌ぐ領域で構築。些細なディテールにこそ、トリッキーなアレンジが隠れているため、その素晴らしさは、現車を実際に見ないと伝わりにくかったりする。
感覚的には、洋服に置き換えると、プレタポルテではなく、完全特注のオートクチュール。それは、まさに、富裕層しか所有できなかった戦前のコーチビルドカー同様のスタイル。そこではビルダーのセンスや技術力が大きく貢献している。
また、出展者にも常連が多く、中でもエリック・クラプトンは、トラディショナルなストリートロッドにおける名門とも言えるロイ・ブリジオに依頼して毎年のように新たに制作した個体を出展。同じように、メタリカのジェームス・ヘッドフィールドも、リック・ドラによるカスタム・コーチビルドカーをほぼ毎年制作し出展している。
日本からはデュースファクトリーがエントリー!
K’s Roadster 1932 Ford Roadster
なんと今回は、2019年の横浜Hot Rod Custom Show(HCS)で、数年ぶりにベスト・オブ・ショーを獲得した、“K’s Roadster”こと1932年型フォード・ロードスターが、日本からはるばるA.M.B.R.への出展を成し遂げた。本場のショーへの出展も念頭に入れて、部品集めからプロジェクトが開始されてのが90年代初頭、妥協せずにゆっくりと丁寧に進行していたが、オーナーのMr.ケンが2015年に他界してしまった。
しかし、ケンの夢を実現すべく、友人たちや、当初より協力してきたショップであるデュースファクトリー、そして、アンディーズも加わって、2019年末に完成。国内でのHCS出展後には、1月のグランドナショナル・ロードスターショーに向けて船で出荷。USAムーンアイズの協力を経て、無事ショーへの出展を果たした!アワードの獲得には至らなかったが、オーセンティックな手法で丁寧に仕立てた“K’s Roadster”は、錚々たる個体がひしめくA.M.B.R.のブースでも、誇らしげだった!
1933 Willys pickup
2020年はどういうわけか、希少なウィリスの出展数が多かった。メインの40~41年型だけでなく、マニアックな33 年型も。何にしても、ドラッグレースでの活躍が人気に直結したモデルなだけに、ドラッグアプローチでモディファイするのがお約束。設計そのものは目新しくはないが、その仕上げのクオリティの高さには、呆れてしまうほど超絶レベル!
1940 Ford Tudor Sedan
世界最速のストリートロッドとして有名な個体。オールスチールボディによるストリートリーガル車にして、900hpのYENKO製BBCエンジンを搭載し、1/4マイル、9.35秒という実力。しかも85年の時点でのこと。長年保持されているのも素晴らしい。
1970 Chevy Chevelle
ストライプ、内装、タイヤのリボンをブルーで統一したレストモッドな個体。627hpのLSX454を搭載。全く同じアプローチのC2も同時展示とはまいっちゃいます。
1972 Chevy Vega GT
オーナーが高校3年生だった74年に、初めての愛車として購入して以来、46年間所有してきた個体。数年前に現代版プロストリートとしてリニューアル。
1972 Chevy C10
クラッシックトラックをベースにマッスルカーにおけるプロツーリング的アプローチでアレンジするケースも増加中。この個体はゲージ類をカマロ用を投入している。
1947 Ford COE Truck
COEはミニカーで頻繁にリリースされるほど大人気。セレブなストリートロッダーが余裕でプロジェクトするケースが殆どで、素晴らしいクオリティ!
1955 Ford Thunderbird
ストックのままではお世辞にもホットとはいえないベビーバードに、なんとSOHC427モーターを投入!疾走感のあるプロポーションも魅力的だ!
1933 Ford Tudor Sedan
バンパーも含めて外観はストックを保持する、いわゆるレストロッドの正統派といった印象しか受けないが、搭載エンジンで撃沈!なんと、ダン・ガーニー率いるオールアメリカンレーサーズによるINDY用エンジン!8スタックにしろ、白く塗られたへダースが意味ありげで素敵。
1941 Willys coupe
ドラッグレースと同義語なほどウィリスといえばドラッグマシンとしてアレンジするのがセオリー。スキニーなフロントに、ファットなリアタイヤで、低く構えるプロストリートなプロポーションが抜群によく似合う。
それと同時に、巨大なルーツブロアーで武装した、過激なほどのエンジンパフォーマンスも重要。セオリーに則ってハイクオリティな仕上がりだけど、モダンなヘッドライトは賛否が割れる。
1962 Chevy Impala
この時代のインパラといえば、ビーチボーイズの名曲にもなったフォーオーナイン(409ci) エンジンがポイント。509にインチアップしたW エンジンを搭載!
1962 Lincoln Continental
観音ドアが特徴の4thのコンチネンタルの人気も上昇中で、会場内だけでも5台ほど出展されていた。この個体のようなレストモッド的なスタイルが主流。
1929 Ford Model A roadster
レポーターが個人的に大好物なモデルAのロードスターは、デュースフレームを持つこんなハイボーイが理想的。90'sハイテック的な仕上げも素敵。
1965 Chevy Chevelle
クラシックなマッスル系のモデルによるハイテックコンバージョンは、一つのスタイルとして成立するほど、年々新たな個体が誕生しているアメリカはいろんな意味で凄い!最新のメカニズムを導入する手法は同じでも、ディテールのアレンジセンスが現れる。
"After Shock" by Rick Dore
ライトには37年型フォードのパーツが採用されているものの、基本的には独自のスタイリングによるコーチビルドカスタム。制作は、近年、メタリカのジェームス・ヘッドフィールドがひいきにしている巨匠、リック・ドラ。
アートモリソン製のカスタムシャシーに、独自に制作したボディを乗せる、まさに往年のコーチビルドカーと同じ手法。流れるようなフォルムの美しさ、クオリティの高さはアートの域。
1965 Pontiac Catalina 2+2
一見するとストックを美しくレストアした程度にも思えるが、純正のデザインのホイールは、ビッグインチ化されCNC で掘削したワンオフ。搭載されたエンジンは、船舶での需要がメインのマーキュリーレーシング社による7L 32バルブDOHCアルミV8のSB4!
750hpのパワーは6速マニュアルで伝達。インテリアもストックを基調としながらも、エアコンの吹き出し口までアルミビレットによるワンオフ製作。
1937 Ford Phaeton
本来は4ドアのコンバーチブルであるフェートンを2ドア化した90'sハイテック。色調やグラフィックがいかにもで、今見ると新鮮!
1956 Plymouth Wagon
ワゴンのなかでも2ドアは、スタイリッシュなルックスが魅力。この個体は、ピラーを前傾させてハードトップ風にアレンジ中。製作は、あの有名なハリウッドホットロッドなのだ!
1973 Dodge Challenger
PGAツアーイベントの勝者に贈られる懸賞品として特別に仕立てた個体。制作を担当したのは、映画『ワイルドスピード』の劇中車の政策でもおなじみのピュアビジョン。4ヶ月という短い作業時間でコンプリートさせるとは流石。ディテールにはMoparファンなら思わずニヤける要素が盛り込まれている。
1932 Ford highboy roadster
2020年のAMBRの受賞車。9フィートのトロフィーと$12,500の小切手が贈られるが、AMBRの受賞にはそんなことが霞むほどの名誉があるのだ。
1963 Chevy Impalamino
シボレーのセダンピックアップとして59年にデビューしたエルカミーノは、61~63の3年間は空白となっている。そんなわけで、もしも63年型のエルカミーのが存在したら、きっとこうなっていたのではないか?
といったアプローチの1台。ベッド部の内側や、トップの処理など、いかにもファクトリーオリジナルと思わせる処理が見事。好みを超えて評価できるクオリティ。
1975 AMC Gremlin
大幅にロングホイールベース化してドラッグスター的に変貌を遂げたグレムリン!ボディはストックでも魅力的だと思うのですが?!
1932 Ford 3Window Coupe
トライファンなビレットホイールがよく似合う90'sハイテックな個体。いろんな形で90'sに注目が集まっている。制作は名門ロイ・ブリジオ。
1970 Dodge Challenger
ロー&ワイドなチャレンジャーのプロポーションが際立つスーパーロースタンスの個体。ハイテックコンバージョンとしてのモダンさと、戦闘機的なディテールを融合した独自のスタイル。
1962 Dodge D-100 4-Door
COEはミニカーで頻繁にリリースされるほど大人気。セレブなストリートロッダーが余裕でプロジェクトするケースが殆どで、素晴らしいクオリティ!
1932 Ford 5Window Coupe
近年のトレンドを感じさせるトラディショナルなアプローチでまとめた秀作。わずかなチョップトップとフェンダーレス、時代に見合うサイドバルブエンジンや細身のタイヤサイズなど、絶妙なバランス。地味ではあるが、超絶クオリティーの素晴らしいフィニッシュ。
Funny Car
70年にカテゴリーとして成立したファニーカーは、ドラッグレースでの花形。旧車ベースによる現代版のノスタルジック・ファニーという新カテゴリーも存在する!
MOONEYES Dragster
今回は、Drag RacingThen & Nowのタイトルで、新旧の有名なレースカーが展示された。日本でもおなじみのムーンアイズのドラッグスターもエントリー!
1932 Ford 5Window Coupe
2.5インチのチョップトップと、ヘッドライトを下部に移設、バンパーの撤去といった程度のアレンジながらも、タイヤのサイズ、ディメンション、車高プロポーションが絶妙で魅力全開のお手本的な個体。クラシカルなゴールドのペイントとクロームのコントラストも素敵。
1933 Ford 3Window Coupe
ホットロッド創世記の雰囲気を再現する個体では、艶のない塗装や、サフェーサーの状態でフィニッシュというスタイルも有りに。それだけに、そうしたアプローチの個体に絞ったスエード・エリアも設置されている。
この個体は、パティーな状態のやさぐれた外装ながら、バランスの良いチョップトップでプロポーションが決まっていると思ったら、巨匠ブリジオ製作でオーナーはエリック・クラプトン様でした。
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Photo & Text 石橋秀樹
アメ車マガジン 2020年 6月号掲載
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