なぜ今、ハマー復活なのかGMのEV本気度

2021 GMC HUMMER EV
AMERICAN TRUCK & SUV
2021 GMC HUMMER EV
激化するフルサイズEVモデル戦線にGMが動く
日本でも大ブームを巻き起こしたハマー・H2。だが、GMの破綻によりハマーブランドは消滅。それから12年後の2020年10月、かねてから噂があったハマー復活がGMから発表された。GMCブランドで、さらにはEV(電気自動車)となって。
これほどまでに、世界でGMCブランドが注目されたことは、かつてなかった。フルサイズSUV「ユーコン」がブランドイメージをけん引したきたが、ハマー復活によって状況は一変した。
今度は、最大出力1000馬力を誇る超パワフルEVのGMCハマーである。 ハマーといえば、日本でも2000年代に「H2」が大ブレイクしたことが記憶に新しい。そもそも軍用目的で開発された「ハンヴィ」を起源とする「H1」。GM主導型のビジネスモデルとなったハマーは、フルサイズピックアップトラック「シルバラード」、フルサイズSUVのシボレー「タホ」「サバーバン」やキャデラック「エスカレード」と同一のラダーフレームを活用した「H2」を商品企画した。「H2」の成功によって、ミッドサイズピックアップトラックのシボレー「コロラド」ベースの「H3」も登場。さらに、H2、H3それぞれにSUT(スポーツ・ユーティリティ・トラック)バージョンの派生車まで出た。
ところが、2008年の、いわゆるリーマンショックでGMは事実上、倒産した。事業再生に向けて、オールズモビル、サターン、そしてハマーがGM自社ブランドから消滅した。ハマーについては中国企業にブランド権が移譲されたが、結果的に中国でハマービジネスは花開かなかった。
そして今回、GMは再びハマーに目を付けた。ブランドではなく、GMCラインアップの1モデルとしての位置付けた。 では、どうしてハマーを復活され、それがどうしてEV(電気自動車)なのか? 背景にあるのは、GMが独自に開発したEVプラットフォームの「アルティウム」だ。韓国のLG化学製のリチウムイオン二次電池の電池パックを中核として、車体の前後それぞれにモーターを持つ。テスラなど、EV専用メーカーも採用している、こうしたEVプラットフォームにGMはスケールメリット(量産効果)を狙って他メーカーとの連携も進めている。そのひとつが、ホンダだ。2024年からホンダが北米で展開する中大型EVは、GM「アルティウム」を採用し、ボディデザインをホンダが行う体制を敷く。
一方で、GMでもアルティウムの多モデル化を進めていくのだが、その導入として大きな話題作りが必要だった。そこで、ハマーの復活だ。フルサイズピックアップのEV化については、フォードがF150のEVバージョンを開発中。また、EV業界をリードするテスラは「サイバートラック」のコンセプトを発表済みである。
こうした競争環境の中で、GMとしてアルティウムのマーケティングとして、さらに最上級モデルの開発による多EVモデルの技術的フィードバックを考慮し、GMCハマー誕生が実現した。ただし、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、GMCハマーEVの世界初公開は予定より半年遅れて、2020年10月20日にオンラインで行われた。
その後もGMのメディア専用サイトでは、デザイナーやエンジニアが自ら登場し、GMCハマーEVの技術詳細について語っている。また、様々なオフロードレースなどの関係者を交えて、GMCハマーEVのオフロード走行性能の実態についても技術的データを裏付けたディスカッションを進めている。
世界市場において、欧州でのC02規制強化、中国での新エネルギー車(NEV)規制、また米カリフォルニア州のゼロエミッションヴィークル(ZEV)規制の商業トラックへの適用など、国や地域のよる環境対応策の強化によって、EVの存在感は一気に高まっている。そうしたなかで、GMCハマーEVは、環境対応はもちろんのこと、プレミアム系EV市場に対するGMの本気度を示す逸品である。 アメリカの報道では、すでにファーストエディションは予約完売という。
歴代のハマーと外観を比較すると、H2・SUTのイメージが残る。フロントマスクは、細く長いデザインテイストで描かれたLEDライトが特徴的だ。サイドビューでは、ひと目でハマーと分かるような、ハマーらしさを継承している。リアビューでは、リアハッチが二段式で階段ような踏み台になるのが特長だ。さらに、フォード「ブロンコ」でも採用されている取り外しが可能なルーフ。リアとフロントに適宜収納できるスペースを持つ。
先進性を最優先にしたインテリアデザイン。その上で、室内造形は全体としても、また個別の部位にとして見ても丸型ではなく角型が優先されている。インパネとダッシュボード中央のディスプレイは運転モードとエンタメモードで分類しているものの、一部では連動した映像も提供する。また、GMの自動運転技術を活用した高度運転支援システムである「スーパークルーズ」もハンズフリーでの追い越しが可能となる、高度なレベル2を実装した。
独自開発のEVプラットフォーム「アルティウム」では前後モーターの設置数を設定できるが、GMCハマーEVでは3モーター式と呼ぶ。電池パックはGMがいう24個のモジュールで、12個が二段式で搭載されている。800V・350kWの直流急速充電を採用し、大容量の電池パックでも充電時間を大幅に短縮している。時速0-60マイル(96km)の加速は約3秒。また、リアタイヤの操舵でき、斜めに走行するクラブウォーク(カニ歩き)が可能。
TEXT/桃田健史
アメ車マガジン 2021年 2月号掲載
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