コルベットに「ZR1」が帰ってくる。由緒正しきコルベットの最強モデル「ZR1」
2019y Chevrolet Corvette ZR1
2019 Chevrolet Corvette ZR1
最高出力はコルベット史上最強の755hpを発揮
アメリカン・オリジナルブランドでは唯一のスポーツカーであるコルベットに「ZR1」が帰ってくる。過去にも何度かラインナップされてきたZR1は、いずれも当時においてコルベットのスペシャルバージョンとして登場した。
そしてそれは今回のZR1も同じ。最高出力は755hp、最大トルクは98.8kg-mという過去最強のスペックを持つ。
コルベットC7
はもともとエアロスタイルではあるが、このZR1はそれをはるかに凌駕する圧倒的なディテールデザインを採用している。新たなロードゴーイングレーサーが日本にやってくるのが待ち遠しい限りだ。
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65年にもなるコルベットの歴史の中で、「ZR1」というモデルはいつも最高にスペシャルな位置づけにあった。
最初のZR1は1970年モデルで登場した。C3の時代である。同じくこの年にデビューした最強のスモールブロックである「LT1」エンジンを搭載し、トランスミッション、足回り、ブレーキなどが強化され、ラジオでさえも装備されなかったストリート・レーサーがZR1だった。当時のコルベットの標準エンジンは300hpだったが、LT1は370hpを発揮した。
1972年モデルまでの3年間だけのスペシャルモデルだったZR1は、生産台数がもっとも少ないスモールブロックのコルベットでもあった。記録によれば3年間トータルで53台のみ。他の仕様と簡単に見分けがつく外観ではなかったこともあり、知る人ぞ知る存在であり、コルベットファンでも実物を見たことのない人が圧倒的に多いと言われている。
次のZR-1はC4の時代、1990~1995年モデルにラインナップされた。C4だけはRと1の間にハイフンが入って「ZR-1」と表記される。こちらは6年間に6939台が製造されて日本にも相当数が輸入されており、当時は多くを目にすることができた。このZR-1は、GMがロータスと共同開発したDOHCエンジンであるLT5を搭載していたのが一番のニュースだった。
もともと「400hpのコルベット」を目指して開発がスタートしたと言われるZR-1だったが、デビュー時のLT5は375hpに止まっていた。しかし1993年モデルでは405hpへとパワーアップを果たし、当初の狙いを達成したのだった。このZR-1は「キング・オブ・ザ・ヒル」と呼ばれ、当時、コルベット史上最強のパワーユニットを搭載したモデルとして熱い視線を集めた。
第三のZR1は、C5ではなくC6で実現した。2005~2013年に渡ったC6の時代は、マスタングに加えてチャレンジャー、カマロ、バイパーが続々と復活を遂げ、新たなパワーウォーズに突入した時期でもあった。そんな状況の中で2009年モデルで登場したコルベットZR1は、スーパーチャージャー付き6.2L V8OHVで638hpのLS9エンジンを搭載した。もちろんこのエンジンパワーはコルベット史上で過去最高のものだった。
というように、由緒正しいネーミングを受け継いだ「ZR1」がC7のラインナップに加わることになった。発売は2018年春、2019年モデルになる。コルベットの第七世代C7は2014年モデルでデビューしており、すでに次世代モデルC8についてのウワサも出てきている。
曰く、C8はFRではなくミッドシップになるとか、次のデトロイトショーで発表されるとか、来秋には製造が開始されるとか。そんな今、C7最後のスペシャルモデルとしてZR1が発表された。最強のFRコルベットになるかもしれないと注目されているのだ。
この面構えこそがZR1のハイパフォーマンスを象徴している。フロントスプリッターが装着されているが、そのすぐ上にあるフロントウイングも、これだけでも大きなダウンフォースを発生させるようにデザインされている。
標準状態のブレーキキャリパーはC6時代のZR1と同様、ブルーにペイントされている。フロントは6ピストン、リアは4ピストン、大径のカーボンセラミックローターにより強力なストッピングパワーを発揮する。
オプションとなるZTKパフォーマンスパッケージに含まれるフロントスプリッターを装着したフロントエンド。大型のリアウイングによる強力なダウンフォースとバランスを取るためには、フロントにも相応のダウンフォースが必要となる。
それを実現するためのフロントスプリッターである。見た目のカッコ良さももちろんだが、ZR1の速さを支える重要な役割をエアロパーツが担っている。
こちらはコンバーチブル。コンバーチブルにもクーペと同様にZTKパフォーマンスパッケージが用意されている。本気で走るならオープントップを閉めた方が速いが、コンバーチブルの好天下での開放感は何ものにも代えがたいものがある。
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さて、ここからは最新型ZR1のディテールについて解説していくことにする。
今回のZR1の最大のトピックは搭載エンジンLT5だ。スーパーチャージャー付き6.2L V8OHVという形式だけを見ると、先代ZR1のLS9エンジンや現行型Z06のLT4エンジンと同じなのだが、実際には前者が638hp、後者も650hpであり、最新ZR1の755hpには遠く及ばないことが分かる。
そこまでブッチ切りの性能を発揮するLT5の秘密としてGMが発表しているのは2つ。ひとつはスーパーチャージャーの大容量化。LT5のスーパーチャージャーは、Z06のLT4に搭載されるスーパーチャージャーに比べて52%増の大容量を持っているという。
もうひとつは、GMで初採用となるデュアルインジェクションによる燃焼の改善。デュアルインジェクションとは、インテークポートとシリンダーの両方にインジェクションをセットして併用し、それぞれからの燃料噴射量を調整しつつ最適な運転状況でエンジンを回すシステム。
直噴エンジンとポート噴射エンジンにはそれぞれメリットとデメリットがあるが、それを併用することでイイトコ取りしようというもの。そんなLT5エンジンのウルトラハイパフォーマンスを受け止めるトランスミッションには、7MTに加えて、ZR1では初めてとなるオートマチックトランスミッション8ATも選べるようになった。
7MTには変速の際にエンジン回転数を合わせてくれるアクティブ・レブ・マッチが組み込まれているし、8ATはもちろんパドルシフトだ。外装に目を転じると、そこにもハイパフォーマンスを象徴するディテールが満載なのが今回のZR1の特徴となっている。
まずはフロントマスク。
そもそものフェイスデザインが他のモデルと根本的に異なるデザインを採用したZR1は今回が初めてとなる。他のバリエーションの場合はフロントバンパーの中央にラジエーターグリルが用意されているのみだが、ZR1はフロントバンパーの前面すべてがエアインテークになっており、その大胆な面構えがまさにZR1のハイパフォーマンスを象徴するようなデザインに仕上がっている。
グリルの格子の奥にはそれぞれにラジエーターが置かれているが、エンジンおよびドライブトレーンを冷却するためのラジエーターは4基が追加され、合計13基が搭載されることになった。フロントフェイスの大幅なデザイン変更はそのために行なわれたのである。
それからZR1専用のカーボンファイバー製フロントフード。Z06よりもスーパーチャージャーが大容量となったことにより、その分、高さのある専用フードとなっているのが特徴で、スーパーチャージャーのインタークーラーへの冷却用エアインテークも設けられているのが分かる。
それからもうひとつ、ZR1には2種類のリアウイングスポイラーが用意されている。この2種類は支柱の高さが明確に異なる。低い方のウイングは、Z06のベースエアロパッケージよりも70%強いダウンフォースを得ることができ、最高速を求めるならこちらの方が有利だという。
高さのある方のウイングは、Z06のオプションであるZ07パフォーマンスパッケージよりも60%強いダウフォードを得ることができ、こちらはサーキットでのラップタイムを短縮するのに有利だという。
これらのリアウイングはどちらも、コルベットレーシングのレースカー「C7・R」と同様にシャシーに直結されており、高い強度とスタビリティを持つという。
ハイウイングの方はZR1に用意されるZTKパフォーマンスパッケージに含まれるもので、このオプションパッケージにはほかに、フロントスプリッター(カーボンファイバーエンドキャップ付き)、Michelin Pilot Sport Cup2タイヤ(フロントがP285/30ZR19、リアはP335/25ZR20)、マグネティック・ライド・コントロールなどがセットになっており、コーナリングでのグリップが格段に強化されている。
なお、ここに掲載した写真でオレンジ色のボディカラーのものは、オプションとなる「セブリング・オレンジ・デザイン・パッケージ」の装着車両である。このパッケージには、オレンジ色のブレーキキャリパー、同じくオレンジ色のロッカー&スプリッターアクセントストライプ、シートベルト、インテリアステッチ、それからブロンズアルミパネルが含まれる。
ZR1にはクーペだけでなくコンバーチブルも用意されている。シャシー、エンジン、ドライブトレーンなど、電動オープントップに関する部分以外は、クーペとコンバーチブルで違いは無く、したがって、最高速度などの走行性能も基本的に同じだという。
ただし、オープントップ機構を搭載しているため、コンバーチブルの方が重量が重くなっているが、その差は27㎏以下であるという。クーペもコンバーチブルも、発売は2018年春と発表されている。現地価格はクーペが11万9995ドル、コンバーチブルが12万3995ドル(いずれも税別)とされた。
大型のリアウイングで強力なダウンフォースを発生させようとすると、車両の前進を阻もうとする空気抵抗も同時に発生させることになるのだが、ZR1のウイングは空気抵抗を最小限にしてダウンフォースを得られるようデザインされた。
従来のZR1にはアニュアルミッションしか用意されていなかったが、今回は8ATも選べるようになった。セレクターレバーのグリップおよびブーツはスエードマイクロファイバー巻きとなっている。
インテリアは、ダッシュボードデザインの基本は現行型コルベットの他のバリエーションと変わっていないが、メーターやシートが専用デザインになっているほか、随所に配置されたカーボンパネル、ZR1ロゴ入りステアリングホイールなど、ZR1としてのアイデンティティを感じさせる部分も多数用意されている。
写真のブロンズアルミパネル、オレンジシートベルト、オレンジステッチなどは、外装のオレンジカラーとセットの「セブリング・オレンジ・デザイン・パッケージ」に含まれるオプションとして設定されているもの。
■主要緒元 2019 Chevrolet Corvette ZR1 | |
燃費(GM計測値) | 市街地 6.4 ㎞/ℓ(7MT)5.5 ㎞/ℓ(8AT) 高速 9.3 ㎞/ℓ(7MT)9.8 ㎞/ℓ(8AT) |
燃料タンク容量 | 70ℓ |
エンジン形式 | LT5 6.2ℓ V8スーパーチャージャー |
内径×行程 | 103.25×92mm |
ブロック材 | アルミ |
シリンダーヘッド材 | アルミ |
バルブトレーン | OHV 16V |
燃料供給装置 | デュアルインジェクション |
最高出力 | 755hp@6300rpm |
最大トルク | 98.8kg-m@4400rpm |
トランスミッション | 7MT アクティブ・レブ・マッチ 8AT パドルシフト |
ファイナルギア比 | 3.42(7MT)2.41(8AT) |
サスペンション 前 | ダブルウィッシュボーン |
サスペンション 後 | ダブルウィッシュボーン |
ステアリング | 電動パワステ |
最小回転半径 | 5.8m |
ブレーキ 前 | 6ピストンアルミキャリパー |
ブレーキ 後 | 4ピストンアルミキャリパー |
ブレーキローター 前 | 394mm カーボンセラミックローター |
ブレーキローター 後 | 388mm カーボンセラミックローター |
ホイール 前 | 19×10.5 |
ホイール 後 | 20×12 |
ホイールベース | 2710mm |
全長 | 4493mm |
全幅 | 1965mm |
全高 | 1234mm |
トレッド 前 | 1615mm |
トレッド 後 | 1588mm |
重量 | 1598kg |
荷室容量 | 425ℓ |
CHEVROLET
http://www.chevrolet.com
Text |アメ車MAGAZINE
2018年 アメ車マガジン 2月号掲載
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