-アメカルにまつわるエトセトラ- #23「 化石じゃなくてヘリテージ 」

コラム

アメカルにまるわるエトセトラ

アメマガ2022年1月号

#23「 化石じゃなくてヘリテージ 」

et cetera about AMERICAN CULTURE -アメカルにまつわるエトセトラ-


et cetera about AMERICAN CULTURE -アメカルにまつわるエトセトラ-
#23「 化石じゃなくてヘリテージ 」

世界中の最も多くの人々にアイコンとして認識されているクルマと言えば「Jeep」でそう異論ないでしょう。そして、それが指し示すのは間違いなく「Wrangler」です。思い起こすと、見るからに四輪駆動車なフォルムの車両を指して「Jeepみたいなクルマ」というのは平成初期くらいまでデフォルトだったような気がします。ランドクルーザーを指して「トヨタのジープみたいなヤツ」的な感じです。そのくらい不変の存在感を持っているのが「Jeep Wrangler」です。


そんなJeepを語るには第二次世界大戦は欠かせません。ドイツ陸軍の小型軍用車両の活躍に着目したアメリカ陸軍は、それを上回る性能の小型四輪駆動車開発を国内の自動車メーカーに要請しました。しかし軍から課せられた要件はかなり厳しく、何より当時のアメ車メーカーにとっては部品流用の効かない極小サイズ。


そんなわけで、軍事品の供給は大きな利益をもたらすにも関わらずGMやフォードでは応えきれず、弱小メーカーだったアメリカン・バンタム社が唯一クリアしたのでした。その設計図をウイリス社とフォード社にも公開し、3社競合によるコンペティションを行ないます。結果、主採用となったのがウイリス社のMA、そしてそれを進化させたMBモデルでした。その後、ウイリスMBと同一設計とされたフォードGPWは共に大量生産されることに。それは「大戦における最大の発明品はJeepとコールマンのポケットヒーター」と言われるほど。


戦後はクローズドボディの民生モデルを追加したり、母体の盛衰によってブランド自体が点々とするなどしますが、ウイリス直系のモデルはYJからWranglerという名称を与えられながら、セブンスロットのグリルや独立したフェンダー、そしてオープンボディを基本とする車体構成を変えず、自動車にとって激動とも言える80年以上の年月を生きながらえてきたのです。


そんなWranglerの姿を「生きた化石」と例える向きがありますが、それはまったくのお門違い。誕生時とは道路環境も社会もまったく違う世の中でもなお「変わらなくみえる」ということは、逆に「ものすごく変わっている」ということ。その時代時代で人々が思い描くJeepのイメージを常にキャッチアップし続けているということなのです。


映画「ジュラシックパーク」に登場する恐竜たちは、一見するとジュラ紀の彼らそのものの再現に見えますが、実は琥珀に閉じ込められた蚊から採集した恐竜のDNAを抽出、欠損した部分をカエルのDNAで補完したハイブリッド。人が管理しやすいように様々な遺伝子操作が施されて…と考えると、なんとなく劇中に登場するWranglerと似たものを感じるのでした。

cap_2001

TEXT & ILLUSTRATION : JIN HATTA
アメ車マガジン 2022年 1月号掲載


最新記事


2024/07/26

物静かな青年が次第に豹変、マスタングにもっと刺激が欲しい!

クーペ

フォード

燃費が…維持費が…。マッスルカーに憧れを持つも、アメ車へのネガティブな思いが強く決断できずにいたオーナーさん。そんな彼が、彼女の後押しによって購入を決めるのだが、次第にアメリカンマッスルの魔力に染まり豹変していく。「音も見た目も刺激が欲しい!」

2024/07/25

ポストビンテージバンの大本命として人気高騰中【シェビーバン ビュービル】

バン

ビンテージ

シボレー

70年代の丸目を筆頭に、フルサイズバンの中でも80年代までの個体がビンテージバンとして人気を博してきた。しかし紹介する個体の様に90年代中頃まで基本コンセプトは変わらない。むしろ熟成された最終モデルこそベストバイ!

2024/07/24

アニメを見て惚れたマスタング、今では押しも押されぬ爆速女子へ

クーペ

フォード

名探偵コナンに登場したマスタングに惹かれてカーボックスを訪れたオーナーさん。一番ド派手なエレノア仕様を選び、チャレンジャー・ヘルキャットに乗る旦那様は走りで負けたくないライバルだ。

2024/07/23

仮契約までしたけどLBスタイルに惚れて変更【ダッジチャレンジャー】

クーペ

ダッジ

過去2回、LBワークスで武装したチャレンジャーに乗ってアメマガ主催イベントamZに参加したみっちさん。軽自動車が長年の愛車だった彼女が、初めてのアメ車としてチャレンジャーを手にするストーリーとは。

ランキング


2024/07/26

物静かな青年が次第に豹変、マスタングにもっと刺激が欲しい!

クーペ

フォード

燃費が…維持費が…。マッスルカーに憧れを持つも、アメ車へのネガティブな思いが強く決断できずにいたオーナーさん。そんな彼が、彼女の後押しによって購入を決めるのだが、次第にアメリカンマッスルの魔力に染まり豹変していく。「音も見た目も刺激が欲しい!」

2024/07/25

ポストビンテージバンの大本命として人気高騰中【シェビーバン ビュービル】

バン

ビンテージ

シボレー

70年代の丸目を筆頭に、フルサイズバンの中でも80年代までの個体がビンテージバンとして人気を博してきた。しかし紹介する個体の様に90年代中頃まで基本コンセプトは変わらない。むしろ熟成された最終モデルこそベストバイ!

2018/02/07

走っているとやけにハンドルがブレる…原因はタイヤ?ホイールバランス?それともブレーキか?【REFRESH PROJECT】

メンテナンス

コラム

走行中に感じた違和感。それはハンドルのブレ。【REFRESH PROJECT】

2022/04/08

US日産の巨大ユーティリティバンのNV3500

バン

逆輸入車

2019 Nissan NV Passenger