-アメカルにまつわるエトセトラ- #08「 アメリカン・ニューシネマ 」

コラム

アメマガ2020年10月号

アメカルにまるわるエトセトラ

#08「 アメリカン・ニューシネマ 」

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-アメカルにまつわるエトセトラ-

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#08「 アメリカン・ニューシネマ 」

私が小学生のころ、親戚のお兄さんが大学に通うために近所に下宿をしていました。それまで一面識もなかったのですが、気さくな彼はすぐに我が家に馴染み、夕飯をよく食べに来たりしていたのを覚えています。両親共に地方出身な我が家は近所に親戚もおらず、ほとんど大人との接点がなかった私にとって、大人でも子供でもない大学生は異質な存在。

特に当時…'60年代後半から'70年代初頭にかけてといえば学生運動真っ只中。彼の…今から思えば全く普通な長めの髪型を見ただけで「実は裏では大変なことをしているかもしれない」と密かに失礼な想像をしていたものでした。そんなことをフと思い出したのは、久しぶりに観た映画「ダーティーメリー・クレイジーラリー」のピーター・フォンダがどことなく彼に似ていることに気が付いたからでした。

 

皆さんは'60年から'70年あたりにかけて製作された「アメリカン・ニューシネマ」というジャンルの映画はご存じでしょうか。それまでハリウッド映画の定番だった「勧善懲悪」や「ハッピーエンド」とは異なる価値観で創造された作品群。「バニシング・ポイント」や「イージー・ライダー」が有名ですが、今回ご紹介する'73年の「ダーティーメリー・クレイジーラリー」もそのジャンルの一本です。

 

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、ある事件を起こした若者二人とひょんなことで知り合った女の子の三人が、警察とのカーチェイスの果て…という定型ストーリー。シボレー・インパラやダッジ・チャージャーが三人の逃走車両として活躍することからアメ車好きに支持されている一本でもあります。特に後半のチャージャーと警察ヘリとのチェイスシーンなどは、CGなど存在しない当時としてはなかなかの見もの。

 

主人公・ラリー役のピーター・フォンダはスタントなしで劇中のカーアクションをこなしているそうで、多少荒っぽい部分がありますが、それはそれでリアリティを感じます。と…アウトラインとしてはクルマ好きなら一度は観ておいて損のない作品ですが…現代を生きるおっさんとして本作を観てみると、主人公・ラリーの無軌道さが座り悪い。

実は「バニシング・ポイント」を観た時も同様な印象で、なんとなく「アメリカン・ニューシネマ」って少し苦手だなぁと思っていたのですが、こちら「クレイジー…」のほうがその傾向が顕著。で、少し調べてみると、その背景には「ベトナム戦争で疲弊したアメリカ」に起因する反戦・反政府ムーブメントがあったそう。

更にその代表的な役者の一人がピーター・フォンダでした。そう知ると、ある程度うなづける部分があると共に、髪型やその衣装に加え、どことなく醸し出された厭世観を、小学生の私なりに当時の大学生…親戚のお兄さんから感じていたのかもしれません。


TEXT & ILLUSTRATION : JIN HATTA
アメ車マガジン 2020年 10月号掲載


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