オールズモビルトロネードは前輪駆動方式を採用する

1970 OLDSMOBILE TORONADO GT
produced by BERNESE
AMERICAN VINTAGE -色気漂う「アメリカンビンテージ」-
前輪駆動方式を採用するエポックメイキングな車両
'70 OLDSMOBILE TORONADO GT produced by BERNESE
今でこそ、前輪駆動車(FF)は広く一般的となり、乗用車の殆どはFFが主流。フラットなフロアや軽量化などのメリットが挙げられるが、第二次世界大戦後に初めて大量生産されたアメ車が、このトロネードだ。
マイナーチェンジが全て上手くいくとは限らない!
2004年にその名前は潰えてしまったが、元々オールズモビルは1897年にミシガンで創業した自動車メーカー。古いクルマばっかり作っているという意味ではなく、ランサム・E・オールズさんが創業したので、言わば「オールズさん家の自動車」という意味がそのまま会社名になっている。だが、創業から11年が経過した1907年にGMの前身にあたるゼネラルモーターズカンパニーに買収され、その後約1世紀に渡りGMのいちブランドとして自動車の歴史に名を残して来た。
GMのブランド名になってからは、ほかのGM車と共通のシャシーやエンジンを使用していながら、自動変速機やターボなどをいち早く新しい技術を採用するブランドとしての地位を築き「走る実験室」と呼ばれる様になるが、ブランドとしてのアイデンティティや存在理由を追求すれば、それは至極当然の流れと言えるだろう。
さて、1966年に初登場したトロネード。最大のトピックスは、第二次世界大戦後のアメ車として、初めて前輪駆動方式を採用している点だ。ほかにもシャープなデザインで三角窓を廃するなど、非常に先進的で未来を先取りした様な印象を受ける。1968年にはグリル内にヘッドライトが移され雰囲気を一新。
さらに1970年型からはコンシールドヘッドライトと決別し、グリル内部に丸形4灯を装備するが、それがまさにバーニーズが輸入したこの個体だ。それまでのモデルよりかなり個性を強調しており、万人受けはしないかも知れないが、誰もが「このクルマは何?」と聞いてくること間違いなし!人気車に乗るのは堅実な考え方と言えるが、ともかくほかの人が選ばない超絶レアなクルマに乗りたい!と思っている人にオススメしたい1台だ。
前述した様に、メカニズムは時代をはるかに先取りしたFFを採用。だが、現代のクルマの様に横置きエンジンではなく、何とそれまでのアメ車と同じく縦置きのV8を搭載!エンジンの真後ろからUターンする様にトランスミッションを接続し、さらに車軸式のドライブシャフトへと駆動力を伝達。フロントサスペンションはスペースの関係からトーションバースプリングを採用するなど、まさに先端技術のオンパレード。

ちなみにGMグループの車両でトーションバースプリングを採用したのも、このトロネードが初めてだ。FR車のレイアウトを使用しつつ、どうやってFF車を作るか…。半世紀前の技術者の苦労が垣間見え、自動車の進化の架け橋的存在とも言えるだろう。
インテリアは、さすがはEボディといったところで、非常に広々としている。ベンチシートで6人乗りというクルマはそれまでにも見られたが、最大の違いはフラットなフロア!6人がフル乗車しても、誰も体育座りの様な姿勢を強いられないことは非常に画期的で、その後世界的にFF車が普及していったのも頷けると言うもの。
ちなみにバーニーズが輸入したこのトロネード。W-34というオプションを装備しており、テールゲートにGTのエンブレムを装着。またマフラーとの干渉を避ける様に、リアバンパーが丸く欠き取られているのが外観上の相違点。もちろん見た目だけではなくエアクリーナーには冷気導入システムや高剛性のカムシャフト、さらに8km/h時のトルクを増大させたトランスミッションを搭載し、パフォーマンスも重視したモデル。非常に個性的だが、大柄な車格からは想像できないほど俊敏な走りも楽しめる欲張りな1台だ。
デビュー当初はリトラクタブル方式で、最初のマイナーチェンジで大きなグリルの奥にヘッドライトを装備する。そして1970年に行なわれた2度目のマイナーチェンジで、固定式ヘッドライトを採用。個性的なクルマに乗りたい人には良いのかも…。タイヤサイズは235/70R15を採用。FR車と違い、前後同サイズを履く。トーションバースプリングはGM車として初採用。あらゆる新技術が盛り込まれたクルマと言える。
5m超の巨体をたやすく走らせる455(7.5L)のV8エンジンを搭載。現在では4WD車でも横置きエンジンを採用するが、この当時は縦置きエンジンの出力をどうやってフロントタイヤに伝達するか腐心した模様。エンジンの真後ろ&真下のスペースにはトランスミッションが鎮座しており、見たこともないレイアウトとなる。
インテリアはブルーとホワイトの爽やかな雰囲気。フロアカーペットは新品に張り替え済みで、美しくリフレッシュ。ベンチシート+コラム+フラットなフロアが生み出す快適な空間は、このトロネードから始まったと言えるだろう。メーターは左右対称な設計となっており、インパネ左端にはエアコンスイッチを、その反対側にはカーラジオを備えている。
THANKS:BERNESE
TEL:059-227-6365HP:http://bernese.co.jp/
PHOTO:浅井岳男
TEXT:空野稜
アメ車マガジン 2021年 11月号掲載
最新記事

2025/06/23
ハワイを感じながら子供たちが毎日楽しめる家
近所の目を気にしながら子育てするのはもうウンザリ。自分たちも、子供たちが自由に遊べる一軒家が欲しい。大好きなハワイを感じられる、理想は兄夫婦のようなカッコイイ住宅。

2025/06/20
奥さんに内緒でプチカスタムマフラーエンド交換【PATRIOTを購入した話 ④】
軽自動車を愛車にする編集部カズの奥さんが、「軽じゃ友達と遠出できないから違うクルマに乗りたい。小さくて個性的なアメ車って無いの?」との発言からスタートしたクルマ探し。数ある候補から購入を決めたのはジープ・パトリオット。基本的にノーマルだが、やっぱりカスタムしたくなってきたのでピットインアクツへGO!

2025/06/18
【ダッジ チャージャー SRT8】アメ車界隈でもスタンス系が盛り上がってほしい
スポーティー系からフルサイズトラックまで所有してきたが、一貫しているのはシャコタンスタイルが好きだということ。タンドラをシャコタンフォルムにと計画したものの、それならチャージャーの方がと勧められて理想へと近づける。

2025/06/16
クルマのサビ対策に最適な逸品、電子サビ防止装置「ラストストッパー」
集中豪雨や台風、そしていよいよ本格化する融雪剤散布シーズンの到来など、クルマにとって過酷な環境である日本。これらが原因で発生したサビはクルマにゆっくりとダメージを与えていくため、サビを発生させないことが何よりの対策だ。科学・化学的に証明された理論を応用して、サビを電子の力で抑制するのがこの「ラストストッパー」なのだ。