クライスラー系全般を総称して「MOPAR」と呼ばれる

コラム

SOUL OF MOPAR

MOPAR

アメマガ2019年5月号

クライスラー系モダンアメリカンがスバラシイ理由 SOUL OF MOPAR


独創性が高いのがクライスラー「MOPAR」

GMやFORD以上にパフォーマンスやクオリティに対するこだわり

MOPAR
元々はクライスラーのパーツ部門の名称として“MOtor”と“PARts”による造語として“MOPAR” のネーミングは1920年代より使われていた。37年に正式なブランド名として製品パッケージにも表示されるようになり、クライスラー系のクルマをMOPAR と総称して呼ばれるようになった背景を持つ。ここでは、MOPAR がGMやフォード とどのようなスタンスの違いを持つのか、特徴についてふれていこう。

1台のクルマをきっかけにその魅力を探求することで、メーカーそのもののポリシーやキャラクター、ブランドとしての価値が見出せ、そのメーカーのファンに発展する。アメリカの3大メーカーのGM、フォード 、クライスラー においても各社に明確なキャラクターがあり、それぞれにアドバンテージを主張するファンが多く存在する。

そのため、それぞれのメーカーに限定したイベントや専門誌も多く存在する。いずれのメーカーも100年以上の歴史があるだけに、経営者や首脳陣がライバル社に転じたり、着目する時代によって賛否が逆転するほどドラマチックだったりする。歴史を重んじるアメリカでは、会社としての歴史的背景も踏まえたうえでファンになる人も少なくない。

それだけに、単に好みのブランドという域を超えて深く支持する人も多い。中でも今回スポットを当てるクライスラー は、ビジネス面での成果では他社に劣るも、熱狂的なファンが多い。そもそも巨大複合企業のGMは、ビュイック 、オールズ、キャデラック など、バラエティに富んでいるうえ、全体的にキャッチーでフレンドリーなモデルが多く存在する。

それだけに、ファン層は最も幅広く、いつの時代も平均的に多くのファンを獲得している。最もポピュラーなシボレーでは、50年代の時点でホットロッドを意識して拡張性が高い設計なのがポイント。その反面、ビジネスありきの運営を優先するため、レース活動などは消極的で、それに伴う極度なハイパフォーマンス仕様の販売を制限していたため、ハードコアなファンは少数と言える。


フォードは、それまでは一部の富裕層のための超高級品だったクルマを、誰もが買える低価格でT型をリリース。爆発的なセールスによってアメリカ人の生活様式が大きく発展。自動車大国への礎を築き上げ、社会革命をもたらした。ヘンリー・フォードはアメリカの文化と経済に最も大きな変化をもたらした人として歴史に名を残している。

マスタング などの革新的なモデルのリリースによって、ポニーカーという新たなカテゴリーを開拓するなど、業界のトレンドセッターとしても影響力のある存在となる。ル・マンにおいてフェラーリを打倒するなど、レースシーンでの功績は大きいが、販売車両におけるハイパフォーマンス仕様の実売数は極めて少数で、ユーザーが保守的。


そしてクライスラー は、ビュイック で技術者としても経営者としても手腕を振るいながらも主義が異なったウォルター・クライスラーが設立。フォード の飛躍に技術面で大きく貢献しながらも、対価も扱いも過小評価されていたダッジ・ブラザース社を買収し、GM、フォード とは鼻っから敵対する存在。

技術の面では常に先進的ながら、セールスではほかの2社に劣っていた。30年代はスピードと信頼性から密造酒の運搬業者の御用達となり、そんな連中の腕試しがNASCARとして発展。そのNASCARにおいてはV8最強のHEMIエンジン と大胆なエアロダイナミック車で史上初の200マイル越えで圧勝。

マッスルカー全盛期においても、GM、フォード では雰囲気ありきの仕様が多い中、クライスラー は頑にハイパフォーマンスの仕様でラインナップ。そうした背景や、密造酒業者からの支持が高かったこともあり、映画などでは大抵ヒールな存在として採用される。

会社も技術者達もレースに積極的なうえ、ユーザーに対するサポートにおいても熱心だったこともあり、ハードコアなファンが多いのが特徴なのだ。実際に魅力を感じるモデルの数では圧倒的にGMが多く、ストリートロッドを基準にすれば間違いなくフォードなのだが、パフォーマンスやクオリティに対する拘り、頑な姿勢や独創性の高さでクライスラー に魅力を感じる人が多いのは事実だ。


ファンの間ではクライスラー全般を総称して呼ばれるMOPAR(モパー) とは、そもそも1937年の時点で部品部門(クライスラー・モーター・パーツ)の名称として採用されたのがはじまり。

頭文字のMを円形状にアレンジしたロゴを採用した60年代中期以降は、パフォーマンスパーツも積極的にリリースされ、レースを楽しむハードコアなファン達によって、クライスラー全般を総称するニックネームとしても広がり定着。

3大メーカーの中ではマイナーな立場であったり、ファン一人一人の想いが強いこともあり、MOPAR ファンは他のメーカーのファン以上にアドバンテージをアピールする人が多いのも特徴。


Text ◆ Hideki Ishibashi
アメ車マガジン 2019年 5月号掲載


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