【ダッジチャージャー】ダッジブランドを牽引したイメージリーダー
過去のアメリカ車のほとんどは、市場投入にあたってはコアな理由を持っている。そのなかでも空力とスタイリング、そして兄弟車を持たないという意味では、ダッジ・チャージャーほどマニアックかつ独自の道を歩んだ存在はほかに例がなかった。
AMERICAN VINTAGE CAR HEAVEN -米国的旧車天国-
ワンアンドオンリーを目指した特別な一台
1968 Dodge Charger R/T
歴史的に見て、アメ車はブランド間において兄弟車が多いという特徴があった。フォードの場合だとフォードとマーキュリー。GMの場合はシボレー/オールズモビル/ビュイック/ポンティアック。クライスラーはダッジとプリマス。このほかにも本来のブランドイメージに即した様々なキャラクターとプライスレンジを駆使して、多彩なラインナップを形成していたのがアメ車だった。
しかし、なかにはそうしたセオリーには相当しないスタンドアローンな存在もあった。その代表的な一台こそがダッジ・チャージャーである。初代ダッジ・チャージャーは、1965年の秋に翌1966年型のニューモデルとしてデビューを飾った。
シャシーコンポーネンツはいわゆるBボディのインターミディエイト。エクステリアデザインはいうまでもなく、インテリアに至るまで非常に凝ったデザインのスペシャルティ度の高いファストバック2ドアハードトップであり、敢えて人気ボディバリエーションだったコンバーチブルを設定せずに、ハードトップのみの展開はこの時代としては異例なことだった。デザイナーは新進気鋭のビル・ブラウンライである。
実のところダッジ・チャージャーがデビューするまでには多くの紆余曲折があった。もともとは1962年の夏頃に、プリマスで開発中だったバリアントをベースにした、コンパクトスペシャルティ(後のバラクーダ)のダッジ・バージョンとして投入する計画だったのが、ダッジのコンパクトカー自体の売れ行きが芳しくなかったことから見送られた。
その後、フォード・マスタングの存在が次第に明らかになるにつれて、スタイリッシュかつプレミアム性に優れたスペシャルティカーの必要性を再確認したダッジの経営陣は、価格設定にも余裕があり収益性にもより優れるということで、インターミディエイトでの投入を決心したということである。
こうした複雑ないきさつを経て市場に投入された初代ダッジ・チャージャーは、そのブランド違いの兄弟車が存在しない、ボディバリエーションは一種類だけ、内装デザインに力を入れていたというスペシャルさを高く評価され、一応の成功作として当時のダッジを代表するモデルとなった。デザインのベースとなったのは、1965年に発表されていたショーモデルの「チャージャーⅡ」である。
同年代の似たテイストのモデルとしては、フルサイズとインターミディエイトの違いこそあれ、フォード・サンダーバードやビュイック・リビエラに近いものがあったといっていいだろう。
とはいえスタイル重視のモデルとあれば、早い時期での新型への更新もまたある意味必須だった。初代が発売されると前後して早くも次期モデルの開発に着手されており、1967年秋に翌1968年型のニューモデルとして市販が開始された。それが今回紹介している1968年代ダッジ・チャージャーR/Tなのである。二代目もボディバリエーションが2ドアハードトップのみ。グレードは事実上の単グレード+オプションパッケージだった前モデルに対して、新型には、新たにハイパフォーマンスグレードのR/Tが加わっていた。
1968年型ダッジ・チャージャーR/Tは、スタイリッシュな2ドアハードトップ、格納式のヒドゥンヘッドライトといった特徴的な部分は先代から引き継ぎつつも、全体的にはより空力性能に特化した印象があった。デザインはクライスラーのエース的存在だったエルウッド・エンジェルの手に拠るものである。
R/Tというのはロード&トラックを意味しており、ストックカーレースやドラッグレースといったモータースポーツイメージを強く印象付ける目的があった。R/Tというグレード自体は前年の1967年モデルからダッジ・コロネットR/Tを通じて展開されていた。ちなみにR/Tのエンジンラインナップは、375hpを発生していた440マグナムをスタンダードに、最強のストリートエンジンだった425hpの426ヘミをオプションに設定するという極めてシンプルなもの。
この二種類のエンジンはあくまでストリート仕様ではあったものの、基本的にチューン度はかなり高かった。それだけに、一般のユーザーが気軽に購入するといった性格のクルマではなかった。あくまでハイパフォーマンスを求める一部の濃いマニアのためのクルマだったということである。トランスミッションは、3速オートマチックのトークフライトA-727と4速マニュアルのA-833のいずれかを選択する例が多かった。
初代チャージャーはカスタムカー然とした個性的なインテリアが特徴だったが、このモデルからはシンプルなモノへと改められた。これはユーザーのインテリアデザインに対する要求度がさほど高くはなかったことと、製造コスト低減が理由だったのだ。
1968年からダッジは新たに「スキャットパック」と銘打ったハイパフォーマンスカーキャンペーンを開始することとなった。対象車はチャージャーR/T、コロネットR/T、スーパービー、ダートGT/GTSである。ここではスーパービーのイメージキャラクターでもあったバンブルビー(マルハナバチ)と共にボディの後端にダブルのストライプ、名付けてバンブルビーストライプをセットするなどして、ダッジのハイパフォーマンスモデルの存在を強くアピールするという戦略だったといって良いだろう。
これらの中でもとくにモータースポーツにおけるイメージリーダー的存在だったのは、ほかでもないチャージャーR/Tである。ドラッグレースはもちろん、ストックカーレースにおけるその存在感は圧倒的だったといっていい。元々チャージャーは初代からその空力性能の高さゆえにストックカーレースでも独自のポジションを築いており、二代目のボディデザインは最初からそれを想定していたことは明らかだった。市販モデルでありながらレースカーとして使うことを前提に、ボディデザインが決められていた稀有な存在だったということである。
同じクライスラーのなかでもダッジにしか存在しないモデルだったということもまた、その特別さを際立てることとなった。ストックカーレースにおけるプリマスユーザーのなかには、同じクライスラーに属するブランドなのだからプリマスからも兄弟車を出して欲しいという声が多々あったのにもかかわらず、ダッジはスタンドアローンであり続けた。
ダッジ・チャージャーは、翌1969年モデルでストックカーレース用にさらに空力性能を高めたチャージャー500と、さらなるエボリューションモデルというべきウイングとロングノーズで武装したチャージャー500デイトナを追加することとなる。その原型というべき1968年型は、アメリカ車の歴史のなかに印象的な一石を投じた存在に外ならない。
ロングノーズから流れる様なラインのルーフを経て、ゆるやかに収束するボディシルエット。ドアの部分がキ
レイに絞られた、コークボトルラインであることがよく分かる。またテール後端がわずかに跳ね上がっている
のも分かる。フェンダーアーチモール以外には目立つクロームトリムは使われていなかった。オプションのバ
イナルトップは、このクルマのボディラインにはよく似合っていた。
ヒドゥンヘッドライトのカバーを開くと4灯ヘッドライトが現れた。バンパーしたのウインカーランプはやや大きな丸形である。クロームバンパーのナンバープレートベースは、控えめなデザインのオーバーライダーに囲まれていた。
オプションのマグナム500ラリーホイール。スタンダードはボディ同色のスチールにセンターホイールキャップ。丸型4灯テールランプも68年型の外観的特徴である。69年型は細長い横型にデザインが変更されていた。
小さな丸形のサイドマーカーランプは1968年型の特徴である。1969年型は細長い長方形に改められていた。赤いR/Tのエンブレムは、ダッジにおけるハイパフォーマンスの象徴でもあった。ロード&トラック(公道&スピードウェイ)を意味していた。
ドアのプレスラインはデザイン上のアクセントであると同時に空力的な効果という意味でも重要な存在だったといわれている。リアフェンダー側面のラインとも関連性があった。
RBブロックのなかでは最大排気量だった440ciをベースに、吸排気系とカムシャフトをチューニングした375hp の440マグナムユニットである。ピークパワーは426ヘミには及ばなかったが、実用性とハイパフォーマンスを両立した名機でもあった。翌年には2バレルキャブ×3の6パック仕様も追加された。
ボディとカラーコーディネートされたインテリアは、初代モデルと比較するとやや質素にはなっていたものの、デザイン的には十分に検討されたものだった。センターコンソールは、セパレートシートとの組み合わせを前提としたオプションである。ダッシュパネルの大きな二つの丸形ゲージは、右がスピードメーター、左が時計とタコメーターのコンビネーションゲージである。この仕様はオプションのラリーダッシュであり、燃料、水温、油圧、電流の4連補助ゲージが特徴だった。
フロアコンソールにセットされた「A-727トークフライト」のATシフター。この他にも、シンプルなコラムシフターのバリエーションも存在していた。ロックボタンは、シフトノブのてっぺんにある。ユニークなデザインだったオプションのセパレートバケットシート。こうした部分がチャージャーらしかった。
THANKS:MADNESS MOTORS【マッドネスモータース】
TEL:048-229-8396
HP:http://madnessmotors.jp
PHOTO:浅井岳男
TEXT:矢吹明紀
アメ車マガジン 2024年2月号掲載
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