【脱・ダッジ】RAM 1500が「ラム」ブランドの新たなアイデンティティを追求する!
RAM1500の進化を追う。ダッジから独自ブランドへ移行したフルサイズピックアップトラックのアイデンティティの変化を紐解く。クライスラーの歴史を背景に、RAM1500のフロントマスクデザインの進化を解説。独自のブランドアイデンティティの確立と未来の方向性に注目!
American Cars Best 20
RAM 1500(ラム1500)1981y-
RAM 1500(ラム1500)1981y-
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「ダッジ・ラム」の時代から日本でも人気のフルサイズピックアップトラック。大きなラジエーターグリルが中央に構えたフロントマスクは、アメ車ファンの憧れとも言える。さまざまなスペシャルエディションのリリースにも積極的だ。
2018 Ram 1500 Laramie Limited
2018 Ram 1500 Laramie Limited
2018 Ram 1500 Rebel Crew Cab 4x4
下に並べたラム1500の写真はすべて現在販売中の2018年モデルだが、大きく分けて3種類のフロントマスクが存在することが分かる。ここに、現在のラム1500の置かれた状況が現れている。 2009年、いわゆるリーマンショックのあおりを受けた世界的な景気後退の中で、クライスラーLLCは経営破綻、連邦破産法の適用を申請し、再生手続きを行なった。
その過程で資本参加したイタリアのフィアットSPAの傘下に入る方向が明確になった。 そこで出てきた施策のひとつが、ピックアップトラックおよびミニバンを除くバンの事業はダッジブランドから独立させて新たなブランドに受け継ぐというもので、その新ブランドのネーミングとして「ラム」を採用した。
同時に、それまで「ラム」という名前で呼ばれていたピックアップトラックは、「ラム」ブランドの「1500」という名前のトラックに変わったのだった。もともと「ラム」はダッジブランドのピックアップトラックの名前だったのに、それがいきなりブランドの名前になったので、それを心得ていないと「ラム」に関するニュースは非常に分かりにくくなってしまった。
こうした事情はメーカーの一方的な事情によるものでユーザーにはほぼ関係ないのだが、その影響が最初に書いたフロントマスクに影響しているのだ。つまり、ラム1500はすでにダッジブランドのクルマではないので、ダッジのアイデンティティであるクロスヘアグリル(フロントグリルの十字デザインのこと)を付けたままでは整合性が取れないのである。
そこで現在は段階的にクロスヘアグリルからの脱却を図っている。2016年モデルで追加された「レベル」は、それまでのラム1500とはまったく異なるフロントマスクを採用した。しかもグリルの中央には「RAM」の文字をハッキリとアピール。 レベルはもちろん、フォードのF-150で注目を集めたラプターの対抗馬であり、デビューと同時にラム1500の販売台数の多数を占めることになった。
そのように市場性の高いモデルで「ラム」ブランドをアピールしたのである。 続いて2017年には、最上位の2グレードとなるリミテッドとララミー・ロングホーンに、クロスヘアグリルでもレベルグリルでもない第三のフロントマスクを採用した。こちらにもグリル中央には「RAM」の文字が配置されており、やはりクロスヘアグリルではないラム1500を印象付けるためのものだ。
そしてさらに、ラム1500は2019年モデルで次世代型へとモデルチェンジすると言われているが、ネット上で語られているテスト車両の目撃談は、新型ラム1500にクロスヘアグリルは無かったというものばかりだ。 現行モデル最後の年ということもあって、スペシャルエディションが多数リリースされている。
下に写真を並べたが、ハーベストエディション、ハイドロブルー・スポーツ、サウスフォーク、リミテッド・タングステンと多彩である。これら4車種のうち、3車種までがクロスヘアグリルではないフロントマスクを採用している。これは偶然ではなく、ラム1500の今後の方向を示しているのだ。
2018 Ram 1500 Rebel Crew Cab 4x4 Specifications | |
全長 | 5816.5㎜ |
全幅 | 2017.4㎜ |
全高 | 1970.4㎜ |
ホイールベース | 3569.4㎜ |
トレッド | 前 1742.2㎜/後 1727.4㎜ |
重量 | 2447kg |
エンジンタイプ | V6 DOHC |
総排気量 | 3.6? |
内径×行程 | 96.0㎜× 83.0㎜ |
圧縮比 | 10.2 : 1 |
最高出力 | 305hp/ 6400rpm |
最大トルク | 37.2kg-m / 4175rpm |
燃料供給装置 | 電子制御マルチポートインジェクション |
変速機 | 8AT |
EPA燃費 | 市街地7.6㎞ /?/高速10.6㎞ /? |
サスペンション前 | ショートロングアーム・エアスプリング |
サスペンション後 | 5リンク・エアスプリング |
ブレーキ前 | ベンチレーテッドディスク |
ブレーキ後 | ディスク |
タイヤサイズ前後 | LT285/70R17 |
B Series 1948-53
ダッジブランドのピックアップトラックに「ラム」という名前が付く前の時代、第二次世界大戦後の最初のモデルがこれ。まだ戦前のデザインを引きずった印象がある。しかしフロントマスクのメタルバンドはクロスヘアグリルの萌芽に見えないだろうか。
D Series 1961-80
こちらも「ラム」前史のモデルである。写真の「パワーワゴン」は、ダッジブランドの4WDピックアップトラックに付けられていた名前で、この後1981年モデル以降は2WDも4WDも「ラム」に一本化された。リトルレッドもこの時代のモデルである。
1st Generation 1981-93
今に至る「ラム」という名前が初めて付けられたモデル。写真は1990年モデルだが、このクロスヘアグリルは1986年モデルからのもので、それ以前のラムには当時のダッジバンと同じような格子グリルが付いていた。
2nd Generation 1994-2001
初代ラムまでのダッジのピックアップトラックは、他車から抜きん出た特徴が無かったため、販売面でも見るべきものはなかった。しかしこの第二世代は大胆な局面デザインを採用し、さらにレトロチックなフロントフェンダーデザインなどで注目を集めるに至った。
3rd Generation 2002-08
先代モデルで成功したスタイリングをもっと押し進め、ラジエーターグリルやヘッドランプを大型化、さらに増した迫力を武器にファン層を拡大していった。さまざまなスペシャルエディションが企画されるようになったのもこの世代からだった。
4th Generation 2009-
先代モデルと似ているようで似ていない、確実に進化した結果、さらなる迫力を身にまとった第四世代。2010年モデルからはラムブランドへと移行、その後、随所に配置されていた「DODGE」ロゴは順次「RAM」ロゴへと切り替えられていった。
CUSTOMIZED MODELS ドリフト競技にもマジ参戦
過激なチューニングが施されたストリートスポーツモデルが並ぶドリフト大会に「マジ」参戦するなど、競技用スポーツトラックとして最前線を走るレーストラック・チューニングの05年型ラム。競技中と一般道でマフラーを切り替えることも可能にするなど、オールラウンダーな面も持っている。
http://www.racetruck-trends.co.jp
第一回amZ 最優秀モデル
このラムを見て、カスタムがすべてDIYだと思う人はまずいないだろう。でもそれは事実で、オーナーさんご本人とそのご家族の作品なのだ。ペイントもそう、リフトアップキットの組み込みもそう、各種パーツの調達や取り付けもそうなのだ。聞くと、それはお父上から受け継いだ考え方、やり方なのだそうだ。
ラムの話をすると、どうしてもダッジブランドとの関係に触れざるを得ないのだが、ラムブランドへの移行後にもラム1500に残ったものがある。それが「ラムヘッド」だ。 ご存知ラムの頭部をかたどったエンブレムで、ダッジブランドを表わすものとしてメインロゴとしてはもちろん、ラム以外の車種にも使われてきた。しかし今はダッジでは使われなくなり、ラム1500のクロスヘアグリル中央には今もこれが輝いている。
まさか「ラム」の頭をラムブランドに渡さずダッジブランドが使い続けるわけにもいかないだろう。それほどに「ダッジのラム」というイメージが根強いのだが、モデルチェンジでフロントマスクのデザインが変われば、すなわちクロスヘアグリルがラム1500から無くなればということだが、徐々に新たなラムブランドのイメージも定着していくに違いない。
逆に直近では今までのクロスヘアグリルの付いたダッジ・ラムおよびラム1500の人気が上がる可能性もある。今のところ、2009年モデルからの現行型の人気が一番高いが、先々代あたりの丸いスタイルに癒されるという人も現れるのではないだろうか。
https://www.ramtrucks.com
Text|アメ車MAGAZINE アメ車マガジン 2018年 3月号掲載
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